『プラビックス』と『バイアスピリン』、同じ抗血小板薬の違いは?~効果・作用の差とDAPTの併用
記事の内容
回答:効果がやや高めの『プラビックス』、個人差が少ない『バイアスピリン』
『プラビックス(一般名:クロピドグレル)』と『バイアスピリン(一般名:アスピリン)』は、どちらも血液をサラサラにする抗血小板薬です。
『プラビックス』は、血栓予防効果がやや高めの薬です。
『バイアスピリン』は、効果の個人差が少ない薬です。

血小板のP2Y12受容体を阻害する『プラビックス』とCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害する『バイアスピリン』は作用メカニズムも異なるため、より高い効果を期待して併用(DAPT:Dual AntiPlatelet Therapy)する場面が多くあります。
回答の根拠①:効果が高めの「クロピドグレル」
動脈硬化性の心筋梗塞や脳卒中を一度起こした人は、再発を防ぐために抗血小板薬を使って治療を行うことになります。
このとき、心筋梗塞や脳卒中の再発予防効果は「アスピリン」よりも「クロピドグレル」のようなP2Y12阻害薬の方がやや高め1,2)とされています。そのため、特に血栓リスクの高い人では「クロピドグレル」のようなP2Y12阻害薬が選ばれる傾向にあります。

※P2Y12阻害薬に分類される抗血小板薬
『パナルジン(一般名:チクロピジン)』
『プラビックス(一般名:クロピドグレル)』
『エフィエント(一般名:プラスグレル)』
『ブリリンタ(一般名:チカグレロル)』
1) Lancet.348(9038):1329-39,(1996) PMID:8918275
2) Cochrane Database Syst Rev.2009(4):CD001246,(2009) PMID:19821273
回答の根拠②:個人差が少なく、長期使用の実績も豊富な「アスピリン」~速効性を期待した使い方
「アスピリン」は、本来はNSAIDsに分類される解熱鎮痛薬ですが、少量で使うことで抗血小板作用が発揮されることがわかり、1990年ころから心筋梗塞3)や脳卒中4)の再発予防を目的とした長期管理に広く使われてきた薬です。
近年は新しい抗血小板薬も多く登場していますが、有効性や安全性の面でそこまで大きく劣ることはありません1,2)。むしろ、人種差5)や代謝酵素CYP2C19の遺伝多型6)によって効果が大きく変動する「クロピドグレル」に比べると、「アスピリン」は作用に個人差が出にくく、安定した効果を得られる面があります。

そのため、今でも「アスピリン」は抗血小板薬の第一選択薬として扱われており7,8)、特に冠動脈疾患では「クロピドグレル」より推奨度が高く設定されている場面もあります7)。
3) Lancet.2(8607):349-60,(1988) PMID:2899772
4) Lancet.338(8779):1345-9,(1991) PMID:1682734
5) J Am Heart Assoc.8(14):e012078,(2019) PMID:31310570
6) Circ J.84(9):1575-1581,(2020) PMID:32713878
7) 日本循環器学会 「2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」
8) 日本脳卒中学会 「脳卒中治療ガイドライン(2025改訂)」
「アスピリン」は速効性にも優れる~急性期に噛み砕いて服用する方法
心筋梗塞などで抗血小板薬の”負荷投与”が必要な場合、最も優先的に選ばれるのは「アスピリン」です7)。これは、「クロピドグレル」などのP2Y12阻害薬に比べ、「アスピリン」による抗血小板作用は服用から15分程度で発揮される9)など、速効性に優れるからです。
ただし、抗血小板薬として用いる「アスピリン」製剤の多くは、胃腸での副作用軽減を目的に腸溶錠(腸に届いてから溶ける錠剤)として作られているため、普通に服用すると錠剤が胃に留まっている3時間程度は効果が遅れることになります。このことから、急性期の初期治療で”負荷投与”を行う際には、「アスピリン」製剤を”噛み砕いて服用”する必要があります7)。

9) バイアスピリン錠 インタビューフォーム
回答の根拠③:「アスピリン」とP2Y12阻害薬を併用する理由~DAPTの意義
COX-1を阻害してトロンボキサンA2の合成を抑制する「アスピリン」と、血小板のP2Y12受容体を阻害する「クロピドグレル」は、そもそも抗血小板作用を発揮するメカニズムが全く異なります。そのため、これら作用の異なる2つの薬を併用する(DAPT:Dual AntiPlatelet Therapy)ことで、より高い血栓予防効果を得ることができます。

こうした抗血小板薬の併用がよく行われるのが、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)後の血栓予防です。
PCIとは、心筋梗塞や狭心症で狭くなった心血管をバルーン(風船)で広げ、再狭窄を防ぐためにステントを留置する施術のことですが、この施術後は血栓ができやすくなることを避けられません。そのため抗血小板薬を使った治療を行うことになりますが、ここでは「アスピリン」と「クロピドグレル」のようなP2Y12阻害薬を併用すると、重大な出血を増やすことなく、心筋梗塞や脳卒中といった血栓症を大幅に減らすことができます10)。
10) N Engl J Med.371(23):2155-66,(2014) PMID:25399658
DAPTを終えたあとの長期管理には、どちらの薬を選ぶ?
抗血小板薬の併用(DAPT)は、生涯に渡って続けるものではなく、血栓と出血のリスクを個々に評価しながら期間を設定します7)。
抗血小板薬を減らす際は、「クロピドグレル」のようなP2Y12阻害薬を減らして「アスピリン」単独の治療に移行するのが基本7)ですが、近年はP2Y12阻害薬単独の治療に切り替えた方が効果的とする報告も増えています11)。
11) BMJ.389:e082561,(2025) PMID:40467090
薬剤師としてのアドバイス:「アスピリン」とNSAIDsの同時服用は避けた方が無難
「アスピリン」は、低用量では抗血小板薬、高用量では解熱鎮痛薬として用いられます。
教科書的には、高用量になると抗血小板作用が失われてしまう(アスピリン・ジレンマ)とされてきましたが、実際は低用量(75~325mg)でも高用量(~1,500mg)でも同じように抗血小板薬として効果を発揮する12,13)ことがわかっています。
ただ、同じNSAIDsである「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」と一緒に使うと「アスピリン」の抗血小板作用は弱まってしまう可能性がある14,15)ため、これらの薬とは2時間以上の間隔をあけて服用するなどの対策をとった方が無難です。
12) BMJ.324(7329):71-86,(2002) PMID:11786451
13) Circulation.132(3):174-81,(2015) PMID:25995313
14) N Engl J Med.345(25):1809-17,(2001) PMID:11752357
15) 医療薬学37(2):69-77,(2011)
ポイントのまとめ
1. 『プラビックス(クロピドグレル)』は、血栓予防の効果が高めのP2Y12阻害薬
2. 『バイアスピリン(アスピリン)』は、効果に人種差・個人差がなく、速効性を期待した使い方もできる、使用実績の豊富なCOX阻害薬
3. PCI後の血栓予防では、これら2つの薬を併用するDAPTを行うのが一般的(DAPT終了後にはアスピリンを残すのが基本だが、近年はP2Y12阻害薬を残す方法も検討されている)
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| クロピドグレル | アスピリン(腸溶錠) | |
| 代表的な医薬品名 | プラビックス | バイアスピリン |
| 薬効分類 | 抗血小板薬(P2Y12阻害薬) | 抗血小板薬(COX阻害薬) |
| 阻害のタイプ | 不可逆 | 不可逆 |
| 冠動脈疾患の再発予防 7) | 第一選択薬 (※アスピリンの方が推奨度の高い場面もある) | 第一選択薬 |
| 脳卒中の再発予防 8) | 推奨度【A】 | 推奨度【A】 |
| 人種差 | 大きい | 小さい |
| CYP2C19による影響 | 大きい | 小さい |
| 効果発現までの時間 | 2~8時間 | 噛み砕いて服用すれば約15分 |
| 用法 | 1日1回 | 1日1回 |
| 国際登場年 | 1997年 | 1989年 |
| 妊娠中の安全性評価 | オーストラリア基準【B1】 | オーストラリア基準【C】 |
| 授乳中の安全性評価 | MMM【L4】 | MMM【L2】 |
| 世界での販売状況 | 世界130ヵ国以上 | 世界100ヵ国以上 |
| 剤型の規格 | 錠(25mg,50mg) | 腸溶錠(100mg) |
| 同系統の薬 | チクロピジン、プラスグレル、チカグレロル | イブプロフェン、ロキソプロフェン |
| 代表的な医薬品の製造販売元 | サノフィ | バイエル |
| 同成分のOTC医薬品 | (販売されていない) | ※解熱鎮痛薬としては広く販売されている |
+αの情報:「アスピリン」と「クロピドグレル」の配合剤『コンプラビン』
抗血小板薬の併用(DAPT)を行う際、「アスピリン」と「クロピドグレル」は最もよく組み合わされる薬です。そのため、1錠でこの2成分を服用できる『コンプラビン(一般名:アスピリン+クロピドグレル)』という配合剤も販売されています16)。
この『コンプラビン』も、「アスピリン」による胃腸障害を防ぐ目的で腸溶錠になっているため、錠剤を割ったり砕いたりすることなく服用する必要があります。
16) コンプラビン配合錠 インタビューフォーム
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











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