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知っておくべきこと 薬学コラム

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子どもの”発達障害”は何が問題か

”育てにくさ”から生まれる親の不安や育児放棄が問題

 ”発達障害”に関する認識が広まり、自分や自分の子どもが”発達障害”なのではないかと病院を受診する人も増えています。

 ”発達障害”については様々な解釈がありますが、基本的には「能力のアンバランス」によって「生活に困る」状態のことを指します。つまり、極論は生活に困らないのであれば”ちょっと変わった人”で済まされることもあります。

 この”発達障害”と”ちょっと変わった人”の間には、明確な区別がありません。もちろん、DSM等によって診断することはできますが、骨が折れているとか、炎症が起きているとかいったように、はっきりと白黒つけることができず、グレーゾーンが多分に含まれるものです。

 いま、このグレーゾーンの子どもの”育てにくさ”から育児放棄につながってしまうことが問題になっています。

 ※薬剤師と心理士の対談企画でも、このテーマを採り上げています。

問題点①:診察室や家では気付かない

 ”発達障害”は、「生活に困る」ことが要素に挙げられますが、これは「他人との関わりの中で問題が生じる」という意味です。
 つまり、1人でいる状態では”発達障害”はおよそ問題にならない、ということです。そのため、診察室では問題が見えて来ない可能性があるのです。

 これによって、診察室で問題無しと診断されたにも関わらず、家で様子を見ている時にも問題が無さそうであるにも関わらず、何故か学校や保育所へ行った時だけ問題を起こす、という事態につながります。

 「うちの子に限って・・・」というのは、なにも”親バカ”というわけではなく、本当に親では気付けないケースも多々あります。この場合、親にとっては何が悪いのかが全く想像できず、極めて大きな不安と育てにくさを感じてしまうことにつながります。

 また、そういったトラブルを頻繁に起こす子どもを抱えている学校や保育所等が、親にいくらトラブル内容を伝えても理解してもらえない、というケースもあります。それは親が子どものことをよく見ていないのではなく、親が家でよく見ていても気づけないからです。
 この場合、あまり子どもを否定するようなことを言うと、「子どもは困っていない、困っているのは教師だけだ」といったような反発を招く恐れもあります。

 このように親の態度を強硬なものにしてしまっては、子どもを治療することも難しくなってしまいます。家では気付けないからこそ、学校や保育所が最初に気付き、適切な医療機関へと導く役割を果たす必要があります。

 

問題点②:子どもに精神系の薬を飲ませる罪悪感

 現在、”発達障害”を真の意味で診断するために、多くの医師は「ある程度の期間、集団で生活するところを観察する」という方法をとっています。
 もし何か不安を感じるのであれば、一人で抱え込まずに、きちんと専門医に相談することをお勧めします。

 治療の際は、必要があれば薬による治療を行います。

 この時、最も大きな問題になるのは、”子どもに精神系の薬を飲ませる”ことによって、親が罪悪感を感じてしまうことです。

 確かに、子どもに精神系の薬を飲ませるのは、気の進むものではありません。しかし、その薬を使うことによって、子ども本人にとっても叱られなくなる、友人関係がうまくいく、といった大きなメリットを得られます。

 もし、いま罪悪感を感じているのであれば、薬を飲み始めてから何か変わったことはないか、子どもに直接話を聞いてみることをお勧めします。そこで、「最近はあまり叱られなくなった」といったフィードバックを得ることができれば、親の感じる罪悪感はすっと軽くなるはずです。

アンバランスということは、突出している所もある

 例えば学校の成績でも、誰でも得意科目と苦手科目があります。しかし、中にはやたら数学ができるのに、国語が全くできない・・・といった極端な成績をとる子どもがいます。

 全ての教科が全くできない、というのは”発達障害”ではありません。”発達障害”では「能力のアンバランス」が生まれます。
 つまり、極端にできないことがある反面、極端にできることも併せ持っているのです。

 何千年も前に、夜な夜な星空を見上げて、全て覚えてしまって「星座」を考え出した人も居るのです。その人は、もしかすると、物凄く狩りが下手だったかもしれません。
 何千年も前に、数字という概念を生み出した人も居るのです。その人は、もしかすると、物凄く人と話すことが下手だったかもしれません。

 いわゆる”稀代の天才”と呼ばれる人たちはどこかが欠落していた、というエピソードは枚挙に暇がありません。

 ”発達障害=悪”という一元論ではなく、適切にフォローすることができれば、本人も親も”生きにくさ”を感じることなく生活できる、ということを認識する必要があります。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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