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喘息治療薬 副作用

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吸入ステロイドは、子どもの成長に影響するって本当?~身長の伸びへの影響

回答:mm単位で影響する可能性はあるが、拒否するメリットは全く無い

 確かに、吸入ステロイドの使用によって、身長の伸びが少なくなる可能性が示唆されています。

 しかし、5cmや6cmと大きく影響するわけではなく、あくまでmm単位での影響です。
 また、吸入薬の使用期間が長くなればなるほど、身長への影響が大きくなるわけでもありません。

 喘息治療では、発作を起こさせないことが重要です。その点で、吸入ステロイドは発作回数を激減させる極めて有用な治療薬です。
 吸入ステロイド使わなければ、喘息発作による入院や死亡に至ってしまうリスクが大きく上昇します。

 成長へ影響する可能性は確かにゼロではありませんが、その影響を気にして吸入ステロイドを拒否するメリットはありません。喘息治療の方が遥かに優先すべきものです。

回答の根拠:2年以上の使用では成長差は無い

 18歳未満の喘息を有する小児が、吸入ステロイドを1年以上使った場合、身長の伸びが年間で0.48cm少なかったことが報告されています1)。

 1) Cochrane Database Syst Rev.(7):CD009471,(2014) PMID:25030198

 ただし、この報告では、2年以上続けて使った場合には、身長の伸びに差が生じなかったことも併せて報告されています。
 つまり、吸入ステロイドの使用期間が長くなればなるほど、身長への影響が大きくなる、という用量依存の関係には無いことが示唆されています。

 仮に、毎年0.48cm続けて身長の伸びが抑制されたとしても、そもそも、小児の喘息治療の場合、吸入ステロイドを10年以上も続けて使用することは稀です。
 成長に伴って喘息は治癒していく傾向にあり、また身長の伸びもある程度の年齢で止まります。

 そのため、5~6cmと”ぱっと見てわかるほど身長に影響する”ことは、およそあり得ないと考えることもできます。

薬剤師としてのアドバイス:吸入ステロイドを拒否するメリットは無い

 先述の通り、成長へ影響する可能性は確かにゼロではありませんが、その影響を気にして吸入ステロイドを拒否するメリットは全くない、と断言できます。
  
 もし吸入ステロイドを拒否した場合、喘息が悪化することによる体調不良によって成長が阻害される恐れもあります。
 0.48cmの身長の伸びを気にするのであれば、吸入ステロイドを拒否するのではなく、早寝早起きやバランスの良い食事を心がける方が、遥かに有益です。

 あくまで、100%安全な薬というものは存在しない、どんな薬にも副作用がある、という情報として念頭に置いておくようにしてください。

 そして、なるべく薬の使用量を減らすために、医師には正しく症状や薬の使用状況を伝えるようにし、症状が治まってきたからといって自己判断で薬を減らしたり止めたりしないようにしてください
 間違った薬の使い方をすると”ぶり返し”等を起こし、トータルで見たときにかえって薬の使用量は増え、使用期間も長くなってしまうことになります。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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