■サイト内検索


スポンサードリンク

ステロイド(外用) 子どもの薬

/

赤ちゃんが、口の周りに塗ったステロイド外用薬を舐めてしまう。大丈夫?

回答:心配いらない

 赤ちゃんが口の周りに塗った薬を舐めてしまった場合、摂取できる薬の量はごくごく微量です。そのため、全く心配する必要はありません。

 例えばステロイド外用剤であっても、そのステロイド成分によって健康に影響するほどの量を摂取しようとした場合、赤ちゃんであっても数kg単位の軟膏を摂取する必要があります。

 しかし、口の周りに塗布できる薬の量は1gにも満たない量です。その全てを綺麗に舐めとってしまったとしても、健康には何の影響もありません。

回答の根拠:仮に、健康に影響させようと思った時に必要になる塗り薬の量

 全ての薬には、「半数致死量(LD50)」という有毒性の基準があります。これは、100人が摂取したとき、50人に致死的な影響を及ぼす、という薬の量のことです。

 ステロイド外用薬を口から摂取した場合の「半数致死量」は、以下のようになっています1)。

・ロコイド軟膏:3,000mg/kg
・リンデロンV軟膏:4,000~4,400mg/kg
・アンテベート軟膏:3,000~3,500mg/kg
・デルモベート軟膏:3,000mg/kg

 1) 各医薬品 インタビューフォーム

 これらの数値は、外用薬の量ではなく、有効成分であるステロイドとしての量です。そのため、それぞれの外用薬の有効成分の濃度から算出すると、外用薬としての量は以下のようになります。

・ロコイド軟膏(0.1%):3kg/kg
・リンデロンV軟膏(0.12%):3~3.5kg/kg
・アンテベート軟膏(0.05%):6~7kg/kg
・デルモベート軟膏(0.05%):6kg/kg

 更に、これらの値は体重1kgあたりの数値のため、体重3kgの赤ちゃんであっても、これらの3倍量が必要になります。

 つまり、体重3kgの赤ちゃんの健康に影響を及ぼすほど、ステロイド外用剤を口から摂取させようとした場合、1本5gの軟膏を、一度に2,000~3,000本飲み込ませなければならない計算になります。

 これは、現実的に考えて不可能な数字です。

 通常、口の周りに1回塗布する薬の量は、せいぜい多くても0.5FTU(0.25g)もありません。例えそれを全て舐めてしまっても、こうした健康への影響を考慮すべき量には遠く及ばないことがわかります。
赤ちゃんが舐めてしまう薬の量

薬剤師としてのアドバイス:塗り直しの方に気を付ける

 赤ちゃんの場合、口の周りに薬を塗っても、どうしても薬を舐めてしまいます。その場合、先述のように体内に入ってしまう薬については憂慮する必要はほとんどありません。

 しかし、薬がとれてしまったからといって何度も薬を塗り直すことには注意が必要です。特に、ステロイド外用薬の場合、あまり頻繁に薬を塗布するべきではありません。

 そのため、赤ちゃんの口の周りに薬を塗る場合は寝ている間に塗布するなど、できるだけ塗布した薬がとれてしまわないように配慮した使い方をする必要があります。

+αの情報:ワセリン・プロペト・アズノール等も心配要らない

 ステロイド外用薬と同じように、口の周りに処方される頻度の高いものとして、『プロペト(一般名:白色ワセリン)』や、『アズノール軟膏(一般名:アズレン)』などがあります。

 こうした塗り薬も、少量を舐めてしまっても心配する必要はありません。

 特に『プロペト』や『アズノール』等のやさしめの薬は、何度塗り直しても良いものとして処方されることもあります。
 どうしても塗布回数が増えてしまうようであれば、一度主治医と相談し、塗り直しが可能な薬を処方してもらうようにしましょう。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

前のページ

次のページ

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

■おすすめ記事

  1. 『ハルナール』・『ユリーフ』・『フリバス』、同じ前立腺肥大の…
  2. 『チャンピックス』と『ニコチネル』、同じ禁煙補助薬の違いは?…
  3. 『ワーファリン』と『バイアスピリン』、同じ血液をサラサラにす…
  4. 『ヒアレイン』と『ジクアス』、同じドライアイ治療薬の違いは?…
  5. 『ナウゼリン』と『プリンペラン』、同じ吐き気止めの違いは?~…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

PAGE TOP