『リウマトレックス』と『フォリアミン』を併用する理由は?~葉酸の副作用軽減効果、24~48時間後というタイミング
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回答:『リウマトレックス』の副作用を減らすため
『リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)』は関節リウマチの治療の中心となる薬ですが、葉酸の働きを阻害することで効果を発揮します。そのため、口内炎や吐き気、肝機能障害といった”葉酸不足”が原因の副作用も起こすことがあります。
こうした副作用を防ぐため、『リウマトレックス』を使う場合は『フォリアミン(一般名:葉酸)』も一緒に使うのが一般的です。

なお『フォリアミン』は『リウマトレックス』と同時には飲むことはせず、『リウマトレックス』を最後に飲んでから24~48時間後(翌日もしくは翌々日)に服用する必要があります。
回答の根拠①:「メトトレキサート」の作用メカニズム~なぜ関節リウマチに効くのか
関節リウマチでは、免疫の異常によって”自分の関節”を攻撃してしまうため、全身の関節に炎症が起こります。こうした炎症が起きている関節では、細胞の活動や増殖が盛んになっているため、非常に多くの「葉酸」が消費されています。
「メトトレキサート」は「葉酸」と化学構造が似ているため、葉酸代謝に拮抗しますが、この作用によって関節への「葉酸」の供給をストップさせ、炎症を抑えたり、異常な細胞増殖を抑えて関節の変形・破壊を防いだりする効果を発揮します1)。
この「メトトレキサート」は、現代の関節リウマチ治療において非常に重要な”アンカードラッグ”として位置づけられています2)。

1) リウマトレックスカプセル インタビューフォーム
2) 日本リウマチ学会 「関節リウマチ診療ガイドライン(2024)」
回答の根拠②:「メトトレキサート」の副作用と、「葉酸」の補給
「メトトレキサート」が「葉酸」の供給をストップさせると、確かに関節リウマチに対する治療効果が発揮されますが、そもそも「葉酸」はヒトが生きていく上で重要な栄養素でもあるため、他の場所では”葉酸不足”による副作用が起こります。
代表的なものは、口内炎や脱毛、吐き気や下痢といった胃腸障害、肝機能障害などが挙げられますが、こうした副作用は「メトトレキサート」による治療を挫折してしまう大きな要因になります。
そこで、これら”葉酸不足”によって起こる副作用を防ぐ/軽減する目的で「葉酸」を補充することが推奨されています2)。実際、適切なタイミングと量で「葉酸」を併用することで、「メトトレキサート」の効果を落とすことなく副作用を25~50%程度軽減できる3,4,5,6)とされているため、現在ではほとんどの場合に「葉酸」の併用が行われています。
3) Arthritis Rheum.33(1):9-18,(1990) PMID:2405864
4) Arthritis Rheum.36(6):795-803,(1993) PMID:8507221
5) Cochrane Database Syst Rev.2013(5):CD000951,(2013) PMID:23728635
6) Br J Dermatol.160(3):622-8,(2009) PMID:18945303
「葉酸」を、「メトトレキサート」投与から24~48時間後に服用する理由
「葉酸」の補充は、「メトトレキサート」のその週の最終投与から24~48時間後に使うのが基本です2)。

「メトトレキサート」とあまりに近いタイミングで服用すると治療効果を邪魔してしまう恐れがある6)一方、あまりに遠いタイミングになると今度は副作用を軽減できなくなってしまうからです。
そのため、まだ「メトトレキサート」が血液中、もしくは筋肉や脂肪中に残っている状態(分布相以内)の時間帯7)を避けた「24~48時間後」というタイミングが一般的に用いられています。
6) Dermatol Online J.23(11):13030/qt4hf5v2vk,(2017) PMID:29447631
7) Ann Intern Med.121(11):833-41,(1994) PMID:7978695
薬剤師としてのアドバイス①:「葉酸」を含むサプリメントや健康食品は、摂る前に必ず相談を
「葉酸」は色々な食品に含まれている栄養素のため、通常の食事からも摂取することができますが、よほど極端なことをしない限り、食事由来の「葉酸」で「メトトレキサート」の効果に影響するということはありません(※「ワルファリン」と「納豆」のように厳格に避ける必要はありません)。
しかし、サプリメント等を使って「葉酸」を大量に摂取すると、薬の効果を弱めてしまう恐れがあります。サプリメントや健康食品を使う際には、自己判断だけ決めずに、事前に必ず医師・薬剤師に相談するようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:「メトトレキサート」の”継続”は、関節リウマチの治療でとても大事
もし「メトトレキサート」を副作用などの問題で継続できなかった場合でも、他にも関節リウマチの治療には色々な薬がありますが、次に選択肢になるのはbDMARDsなどの”高額な薬”が多くなります。そのため、できれば安価に使える「メトトレキサート」で治療できた方が、経済面でも負担は少なくなります。
そういった意味で、「葉酸」を適切に使って「メトトレキサート」での治療を継続できるように副作用を制御することは、関節リウマチの治療において非常に重要な意味を持ちます。
ポイントのまとめ
1. 『リウマトレックス(メトトレキサート)』は、葉酸に拮抗することで治療効果を発揮する
2. 『リウマトレックス(メトトレキサート)』による副作用(特に肝機能障害)は、葉酸の補充で大きく軽減できる
3. 「24~48時間後」というのは、治療効果を邪魔せずに副作用を軽減できる「葉酸」補充のベストタイミング
+αの情報:より強力な葉酸製剤『ロイコボリン』
「メトトレキサート」で重篤な副作用が起き、「葉酸」の緊急補充が必要になった場合には、通常の「葉酸」よりも強力な活性型葉酸製剤の『ロイコボリン(一般名:ホリナート)』を使います。
ただし、この活性型葉酸製剤の『ロイコボリン』は通常の「葉酸」よりも値段が40倍以上高く、普段の副作用軽減においては効果もあまり変わらない8)ため、通常は「メトトレキサート」との定期的な併用には使われません。
8) Br J Dermatol.160(3):622-8,(2009) PMID:18945303
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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