PPIとH2ブロッカー、同じ胃酸を抑える薬の違いは?~強さ、持続性と速効性、投与制限、昼夜の効果差、ピロリ菌への影響


回答:強さ、持続性と速効性、投与制限、昼夜の効果差、ピロリ菌への影響が異なる

 「PPI(プロトンポンプ阻害薬)」と「H2ブロッカー」は、どちらも「胃酸分泌抑制薬」に分類される薬で、消化性潰瘍の治療に用います。
 使用する目的はほとんど同じですが、以下の項目で比較するとそれぞれに明確な違いがあります。
PPIとH2ブロッカー

 「PPI」の方が強力で効き目も長く続きますが、保険適用上8週を超えて処方できないほか、服用中はピロリ菌の検査結果が正しく出ない(偽陰性)恐れがあります。

 「H2ブロッカー」は効き目が速く現れるほか、処方に制限もないため維持療法にも便利です。

 また、「PPI」は日中、「H2ブロッカー」は夜間の胃酸過多に効果的なため、症状によっても使い分けるほか、例外的に併用することもあります。



回答の根拠①:胃酸を抑える作用の強さ

 「PPI」と「H2ブロッカー」は、どちらも胃酸の分泌を抑える作用があります。

 「PPI」は、酸分泌を行う最終段階である「プロトンポンプ(H+/K+ -ATPase)」を特異的に阻害することで酸分泌を抑えます。
 「H2ブロッカー」は、胃粘膜にある胃壁細胞の「ヒスタミンH2受容体」に拮抗することで酸分泌を抑えます。

 酸分泌を抑える効果は「PPI」の方が強力です。そのため、消化性潰瘍の第一選択薬には「PPI」が選ばれています1)。
PPIとH2ブロッカー~効果の強さ
 1) 日本消化器学会 「消化性潰瘍診療ガイドライン」 (2009)

 併用薬や持病・アレルギーなど、何らかの事情によって「PPI」を使えない場合には「H2ブロッカー」を選択します。



回答の根拠②:速効性~胃酸による活性化の有無

 「PPI」が効果を発揮するためには、まず胃酸で活性化される必要があります2)。そのため、効果が出るまでに多少の時間を要します。
 しかし「H2ブロッカー」は活性化の必要がないため、効果が速く現れます。
PPIとH2ブロッカー~速さ
 2) タケキャブ錠 インタビューフォーム



回答の根拠③:持続性~プロトンポンプの非可逆阻害

 「PPI」は、プロトンポンプを非可逆的に阻害するため、血中濃度が低下してからもしばらく胃酸を抑える効果が持続します。半減期が短いにも関わらず、1日1回の服用で良いのはこうした性質によります

 「H2ブロッカー」は、血中濃度が低下すると効果も無くなってしまいます。
 


回答の根拠④:投与日数の制限

 「PPI」は保険適用上、十二指腸潰瘍では6週間、逆流性食道炎では8週間という投与日数制限があります3)。そのため、長期に渡って維持療法を行う場合には「H2ブロッカー」を選ぶ必要があります。
PPIとH2ブロッカー~投与制限
 3) タケプロンOD錠 添付文書

 ただし、高齢者に対してはH2ブロッカーよりもPPIの使用が推奨されていることも留意する必要があります4)。

 4) 老年医学会 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」



回答の根拠⑤:昼と夜の効果の違い

 「PPI」が作用するプロトンポンプは食事によって活性化するため、「PPI」は夜よりも、食事をする日中の酸抑制効果が高くなります5)。

 5) エーザイ(株) 「GERD治療の第一選択薬はPPIなのか」

 「H2ブロッカー」は夜間の酸抑制効果が高いことが知られています。

 「PPI」を服用中にも関わらず、夜間に胃酸の過分泌が起こる「難治性の逆流性食道炎(Nocturnal Gastric Acid Breakthrough:NAB)」という病態があります。
 このNABに対して「H2ブロッカー」を夜に1回追加投与し、例外的に「PPI」と「H2ブロッカー」を併用することの有効性が報告されています6)。

 6) J Gastroenterol.38(9):830-5,(2003) PMID:14564627



回答の根拠⑥:ピロリ菌の検査結果に対する影響

 「PPI」を服用中はピロリ菌の検査で正しい結果が出ない恐れがあります

 そのため、ピロリ菌の検査前には一旦「H2ブロッカー」や、に切り替えるといった措置が必要です。



+αの情報:新薬『タケキャブ』

 これまで、胃酸分泌を抑える薬は主にPPIとH2ブロッカーの2つが使われてきましたが、「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)」と呼ばれる新しい胃酸分泌抑制薬、『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』が登場しています。

 『タケキャブ』は「PPI」の弱点であった、効果に時間がかかることや、代謝酵素の差によって個人差が出ることが改善されています
 
 ピロリ除菌に対しても「PPI」より高い成功率が報告されていることから、今後は「PPI」や「H2ブロッカー」と合わせて選択肢の一つとなっていくと考えられています。
 
※現在使われている「PPI」
『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』
『オメプラール(一般名:オメプラゾール)』
『パリエット(一般名:ラベプラゾール)』
『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』

※現在使われている「H2ブロッカー」
『ガスター(一般名:ファモチジン)』
『タガメット(一般名:シメチジン)』
『ザンタック(一般名:ラニチジン)』
『アシノン(一般名:ニザチジン)』
『プロテカジン(一般名:ラフチジン)』



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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