回答：安価で適応症が広い『リリカ』、効果がやや高めの『タリージェ』

　『リリカ（一般名：プレガバリン）』と『タリージェ（一般名：ミロガバリン）』は、どちらも神経の痛みに使う薬です。

　『リリカ』は、値段が安く、適応症も広い薬です。
　『タリージェ』は、鎮痛効果がやや高めの薬です。

　効果や副作用に厳密な使い分けが必要なほどの違いはないため、まずは安価な『リリカ』を試し、効果や副作用に問題があれば『タリージェ』に切り替える、といった使い方もよく行われています。

　

回答の根拠①：安価で神経の痛みに広く使える「プレガバリン」

　「プレガバリン」や「ミロガバリン」は、ビリビリと電気が走る、チリチリと灼けるように感じるような神経の痛み＝神経障害性疼痛に特化した痛み止め1,2)です。神経の痛みには、『ロキソニン（一般名：ロキソプロフェン）』や『ボルタレン（一般名：ジクロフェナク）』といった一般的な痛み止め（NSAIDs）が効かないため、こうした神経の痛み専用の薬を使う必要があります。

　実際に「プレガバリン」や「ミロガバリン」は、帯状疱疹後の神経痛や糖尿病性の神経障害といった神経障害性疼痛の痛みを和らげるのに効果的3,4)です。
　ただ、より以前から使われている「プレガバリン」の方が薬の値段は安く、経済的負担を抑えた選択肢になります。

※薬価の比較（2025年改訂時）
プレガバリン：25mg（31.80）、75mg（52.40）、150mg（66.30）
ミロガバリン：2.5mg（67.20）、5mg（92.50）、10mg（127.90）、15mg（154.80）

1) リリカカプセル　インタビューフォーム
2) タリージェ錠　インタビューフォーム
3) Cochrane Database Syst Rev.1(1):CD007076,(2019) PMID:30673120
4) Eur J Pain.29(10):e70112,(2025) PMID:40970451

　

「プレガバリン」は、線維筋痛症にも有効

　「プレガバリン」は、線維筋痛症にも効果が確認されています5)。線維筋痛症では、全身に原因不明の痛みが続きQOLが大きく低下するほか、効果的な薬も多くないため、保険適用もある「プレガバリン」は非常に貴重な選択肢になります。
　なお「ミロガバリン」は、線維筋痛症に対する効果が確認されなかった6)ため、適応症は神経障害性疼痛だけに留まっています。

※適応症の違い
プレガバリン：神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛
ミロガバリン：神経障害性疼痛

5) J Orthop Traumatol.10(4):185-91,(2009) PMID:19921480
6) Curr Med Res Opin.35(10):1825-1835,(2019) PMID:31284771

　

回答の根拠②：効果が優れる「ミロガバリン」～切り替えでは”眠気”も減らせる可能性

　帯状疱疹後の神経痛や糖尿病性の末梢神経障害に対して、「ミロガバリン」では「プレガバリン」よりもやや優れた鎮痛効果を得られます7,8,9)。大きな違いではありませんが、少しでも高い効果を期待する際は「ミロガバリン」がよく選ばれます。

7) Int J Clin Pract.75(5):e13744,(2021) PMID:32991782
8) BMC Cancer.21(1):1319,(2021) PMID:34886831
9) J Med Econ.23(5):529-536,(2020) PMID:31971469

　

「プレガバリン」から「ミロガバリン」への切り替えで、眠気を軽減できる可能性

 　「ミロガバリン」は、「プレガバリン」の作用ポイントであるα₂δ-1とα₂δ-2のうち、神経痛に関わるα₂δ-1に対して選択的に作用し、眠気などに関わるα₂δ-2にはあまり影響しないよう改良された薬です2)。このことから、理論上は「ミロガバリン」の方が「プレガバリン」よりも眠気の副作用は少なくなるはずです。

　ところが、実際のところは「ミロガバリン」と「プレガバリン」で眠気の出やすさはほとんど変わらない3)ようです。ただ、「プレガバリン」で眠気やふらつきの副作用が問題になった場合に「ミロガバリン」へ切り替えると、副作用を少なく抑えて治療を継続できる10,11)といった報告があります。

　そのため、「プレガバリン」で眠気が強く現れた際には、「ミロガバリン」へ切り替えることも良い選択肢になります。

10) Pain Ther.10(1):711-727,(2021) PMID:33856660
11) Global Spine J.13(5):1319-1324,(2023) PMID:34325544

　

薬剤師としてのアドバイス：ほとんどの人が感じる「眠気」を減らすために

　「プレガバリン」や「ミロガバリン」は、神経の痛みに効果のある貴重な薬ですが、どちらも非常に眠くなりやすい薬です。
　この眠気は、神経痛で眠りを妨げられていた人にとっては有益になる12)こともありますが、高齢者ではふらつき・転倒による骨折リスクになる13)、若い人でも自動車運転に制限がかかる1,2)など、大きな問題にもつながりやすい副作用です。

　なお、こうした眠気による悪影響をなるべく軽減するために、「プレガバリン」や「ミロガバリン」は少量から始めて徐々に増量する、あるいは腎機能に応じて用量を調節する、といった使い方をする必要があります1,2)。
　用法・用量は必ず守り、自己判断で服用する量や回数を増やしたりしないようにしてください。

12) Medicine (Baltimore).96(51):e9167,(2017) PMID:29390451
13) Am J Kidney Dis.80(1):98-107.e1,(2022) PMID:34979160

　

ポイントのまとめ

1. 『リリカ（プレガバリン）』は、安価で適応症が広い（線維筋痛症にも使える）
2. 『タリージェ（ミロガバリン）』は、効果がやや高めで、眠気の少ない”切り替え先”にもなる
3. どちらの薬も副作用軽減のため、少量からの開始と腎機能に応じた用量調節が重要

　
　

薬のカタログスペックの比較

　添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

	プレガバリン	ミロガバリン
先発医薬品名	リリカ	タリージェ
主に作用するポイント	α₂δ-1とα₂δ-2	α₂δ-1のみ
適応症	神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛	神経障害性疼痛
基本的な用法	１日２回	１日２回
投与方法	150mg/日から開始し、300～600mg/日まで増量	10mg/日から開始し、20～30mg/日まで増量
腎機能低下時の１日量 （※神経障害性疼痛）	CCr（mL/min） 30～60：75～300mg 15～30：25～150mg ＜15：25～75mg	CCr（mL/min） 60～90：10～30mg 30～60：5～15mg ＜30：2.5～7.5mg
併用禁忌	なし	なし
国際誕生年	2004年	2019年
妊娠中の安全性評価	オーストラリア基準【Ｄ】	–
授乳中の安全性評価	MMM【Ｌ３】	–
世界での販売状況	世界100ヵ国以上	韓国、タイ
剤型の規格	カプセル（25mg,75mg,150mg）、 OD錠（25mg,75mg,150mg）	錠・OD錠（2.5mg,5mg,10mg,15mg）
先発医薬品の製造販売元	ヴィアトリス	第一三共
同成分のOTC医薬品	（販売されていない）	（販売されていない）

　

　

＋αの情報①：腰痛に対する「プレガバリン」の効果は乏しい

　神経痛を伴う腰痛に対し、「プレガバリン」はほぼ効果がない14,15)か、効果があっても限定的3,16)とされています。そのため、腰痛に対して積極的に使われる場面は少なくなっています。
　ただ、NSAIDs単独でも「プレガバリン」単独でもほぼ効果を得られないような腰痛に対し、NSAIDsと「プレガバリン」を併用することで初めて効果が得られる17)という報告もあるため、状況によっては選択肢になります。

14) CMAJ. 2018 Jul 3;190(26):E786-E793,(2018) PMID:29970367
15) N Engl J Med.376(12):1111-1120,(2017) PMID:28328324
16) BMJ.380:e072962,(2023) PMID:36948512
17) J Orthop Traumatol.10(4):185-91,(2009) PMID:19921480

 

 ＋αの情報②：神経痛には『サインバルタ（一般名：デュロキセチン）』なども選択肢になる

　NSAIDsやアセトアミノフェンといった一般的な痛み止めが効かない”神経の痛み”には、「プレガバリン」や「ミロガバリン」といった専用の薬のほかにも、SNRIの『サインバルタ（一般名：デュロキセチン）』や鎮痛補助薬の『ノイロトロピン（一般名：ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出物）』なども選択肢になります。

　

～注意事項～

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。