回答:『タミフル』は”30分以内”なら飲み直し、『ゾフルーザ』の飲み直しは推奨されていない
『タミフル(一般名:オセルタミビル)』と『ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)』は、どちらもインフルエンザの治療に使う抗ウイルス薬です。
「オセルタミビル」では、飲んでから30分以内であれば同じ量の薬をもう一度”飲み直し”する、30分以上が経っていれば次の服用タイミングまで待つ、という対応が推奨されています。
「バロキサビル」は、”飲み直し”は推奨されていません。

ただし、抗ウイルス薬の必要性や重要性は人によって大きく異なるため、特別な事情があれば、こうした基本とは異なる対応をすることもあります。
回答の根拠①:「オセルタミビル」の”飲み直し”~30分という目安の妥当性
薬を服用した後に吐いてしまった場合の対応については、病状や薬の重要性・目的、剤型の種類、吸収の速さ、服薬からの時間経過など、様々な要因によって変わるため、明確な指針やガイドラインは存在しません1)。そのため、医療従事者の多くは「30分以内であれば飲み直し」という経験上の目安を参考にしています2)。
「オセルタミビル」に関しては、この「30分」という目安がそのまま用いられています3)。

◆「オセルタミビル」を服用してから吐いてしまうまでの時間が…
30分以内:同じ1回量を”飲み直し”する
30分以上:”飲み直し”をせず、次の服用タイミングを待つ
実際、「オセルタミビル」は服用から30分以内で、既に活性代謝物が血液中に検出され始める4)ことが確認されています。そのため、服用から30分が経過していれば”一定量の薬は既に吸収されている”と判断し、飲み直しはしなくて良い、と判断することは、非常に妥当なものと考えられます。
1) Acta Paediatr.114(10):2506-2510,(2025) PMID:40375445
2) Can J Hosp Pharm.65(3):196-201,(2012) PMID:22783030
3) Medicine for Children「Oseltamivir for influenza (flu)」→リンク
4) Clin Pharmacokinet.37(6):471-84,(1999) PMID:10628898
”飲み直し”で余分に使う1回分は?
なお、「オセルタミビル」は全部で10回(1日2回を5日間)服用する薬のため、”飲み直し”をすると5日目の薬が不足することになります。
最後の1回分が不足するよりも、治療の序盤~中盤で薬が不足してしまうことの方が、薬のメカニズム的にもデメリットは大きいと考えられるため、通常はこの不足は許容することになります。

ただし、持病を抱えている等の理由でインフルエンザの重症化リスクが高い子どもの場合には、「吐いた」ことを伝えるのも兼ねて、医師と対応を相談してもらった方が安心です。
回答の根拠②:「バロキサビル」が”飲み直し”に適さない理由~服用回数と吸収の速さ
「バロキサビル」は、1回の服用で治療が完了するタイプの薬です5)。そのため服用した後に吐いてしまうと、そもそも”飲み直し”ができません。では、薬をもう一度処方してもらった方が良いかというと、こうした「バロキサビル」の”飲み直し”は公式でも推奨されていません6)。
というのも、「バロキサビル」は服用すると比較的速やかに吸収されると考えられている7)ため、”飲み直し”をすると過剰投与になってしまうリスクがある上に、半減期が約100時間と非常に長い5)ことから、その過剰投与の状態も長時間に渡って続いてしまうことになるからです。

そのため「バロキサビル」の場合は、服用からの経過時間にかかわらず、”飲み直し”は行わないのが一般的です。
5) ゾフルーザ錠 添付文書
6) 塩野義製薬「ゾフルーザ錠~よくある質問」→リンク
7) Pharm Sci.108(5):1896-1904,(2019) PMID:30557562
「バロキサビル」を服用後に吐いてしまった際に、できる対応は?
「バロキサビル」を服用した後に吐いてしまい、しかも薬がちゃんと吸収されたのかどうか不確かな場合には、同じ「バロキサビル」ではなく、「オセルタミビル」の方を”飲み直し”するという方法もあります。
「バロキサビル」と「オセルタミビル」は作用メカニズムが異なり、併用することにも目立った問題はないからです。
薬としても「オセルタミビル」の方が小児への投与実績が豊富なため、劣る治療になってしまうと心配する必要もありません。
ただし、幼児や、基礎疾患があったり呼吸症状が強く現れていたりするハイリスクな小児でなければ、そもそもインフルエンザに対する抗ウイルス薬は治療上も必須というものではありません8)。薬を新たに処方してもらってまでの”飲み直し”が必要かどうかは、子どもの持病や状態などによって大きく異なるため、主治医とよく相談した上で考えてもらうのが無難です。
8) 日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」→リンク
薬剤師としてのアドバイス:”飲み直し”を「した場合」と「しなかった場合」のリスクも比較する
薬を飲んだあとに吐いてしまったときの対応を考える際、服用から「30分」が経過しているかどうかは、1つのわかりやすい目安になります。
しかし、実際に”飲み直し”をすべきかどうかを判断するためには、その薬を使っている目的や重要性、用法用量、薬の吸収速度、血中濃度推移といった情報のほか、「飲み直しをした場合のリスク(過剰摂取)」と「飲み直しをしなかった場合のリスク(薬の不足)」を比較しながら考える必要があります。

また、そもそも嘔吐を繰り返しているような場合には、薬の”飲み直し”を考える前に、病状の悪化も警戒する必要もあるため、相談と状況の共有を兼ねて、一度主治医に連絡をとることをお勧めします。
ポイントのまとめ
1. 『タミフル(オセルタミビル)』は、飲んで30分以内に吐いた場合には、同じ1回量を”飲み直し”するのが基本
2. 『ゾフルーザ(バロキサビル)』は、飲んだ後に吐いてしまっても”飲み直し”はしない(できない)のが基本
3. 吐いた後の薬の”飲み直し”は、「過剰摂取」と「薬の不足」のどちらがより大きな問題になるかを考える
+αの情報:カプセルが”そのまま”出てきた場合は…
薬を飲んだ後に吐いた際、カプセルが元の形を保った”そのまま”の状態で出てきた場合は、基本的に「薬の成分はほとんど吸収されていない」と判断し、薬の”飲み直し”ができると考えられます。
錠剤の場合も、基本は同様に考えられますが、なかには錠剤のかたちを保ったまま徐々に有効成分を放出するタイプのものもあることに注意が必要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。









この記事へのコメントはありません。