『メジコン』・『アスベリン』・「リン酸コデイン」、同じ咳止め薬の違いは?~風邪の咳に対する効果と副作用
記事の内容
- 1 回答:効果の高い『メジコン』、副作用が少ない『アスベリン』、鎮静・鎮痛作用もある「コデイン」
- 2 回答の根拠①:急性・慢性の咳に効果がある「デキストロメトルファン」~風邪の咳にも効果的な貴重な薬
- 3 回答の根拠②:小さな子どもでも副作用の少ない「チペピジン」~相互作用も起こしにくい薬
- 4 回答の根拠③:鎮静・鎮痛作用もある「コデイン」~麻薬性鎮咳薬の副作用に注意
- 5 薬剤師としてのアドバイス:風邪の咳には「ハチミツ」も効果的
- 6 薬のカタログスペックの比較
- 7 +αの情報①:感染後咳嗽には、漢方薬や吸入薬という選択肢
- 8 +αの情報②:長引く咳には”咳止め”ではなく根本的な治療を
- 9 +αの情報③:「コデイン」の妊娠・授乳中の使用について
回答:効果の高い『メジコン』、副作用が少ない『アスベリン』、鎮静・鎮痛作用もある「コデイン」
『メジコン(一般名:デキストロメトルファン)』、『アスベリン(一般名:チペピジン)』、「コデイン(リン酸コデイン/ジヒドロコデインリン酸)は、どれも咳止めの薬です。
『メジコン』は、咳を止める効果の高い薬です。
『アスベリン』は、副作用が少なく、小さな子どもに使いやすい薬です。
「コデイン」は、鎮静・鎮痛作用も持っている薬です。

特に『メジコン』は、”風邪の咳”にも効果が確認されている数少ない咳止めとして重宝します。一方で、副作用の問題から小さな子どもには『アスベリン』、鎮静や鎮痛の効果が求められる場面では「コデイン」が選ばれることもあります。
回答の根拠①:急性・慢性の咳に効果がある「デキストロメトルファン」~風邪の咳にも効果的な貴重な薬
「デキストロメトルファン」は、風邪などの「急性の咳」1,2)と、長引く「慢性の咳」3)の両方で効果が確認されています。
特に、風邪のときに出る「急性の咳」は、生産性や睡眠の質を著しく低下させる4)厄介な症状ですが、多くの咳止めは効果的ではありません5)。そのため、実際に咳を減らす効果が確認されている「デキストロメトルファン」は貴重な選択肢になります。

1) Cochrane Database Syst Rev.4(4):CD007094,(2018) PMID:29633783
2) Pediatr Pulmonol.58(8):2229-2239,(2023) PMID:37232330
3) Chest.144(6):1827-38,(2013) PMID:23928798
4) Curr Med Res Opin.31(8):1519-25,(2015) PMID:26073933
5) Cochrane Database Syst Rev.(11):CD001831,(2014) PMID:25420096
回答の根拠②:小さな子どもでも副作用の少ない「チペピジン」~相互作用も起こしにくい薬
「デキストロメトルファン」と「チペピジン」は、どちらも保険適用上は乳幼児から使うことができます6,7)。しかし、「デキストロメトルファン」は小児では副作用が出やすい8)ほか、年少者の薬物濫用に悪用されることも多い9)など、子どもにはあまり気軽に使えません。
その点、「チペピジン」は目立った副作用がなく10)、濫用のリスクも低いため、小さな子どもから使いやすい咳止めと言えます。

「チペピジン」は、急性・慢性どちらの咳に対しても実際の有効性はほとんど報告されておらず、期待できる薬学的なメリットは極めて限定的な可能性があります。ただ、薬で得られる咳止め効果には”プラセボ効果”が大きく関係している11)ことから、特に小児にはこうしたプラセボ効果を引き出す”依り代”として使われることもあります。
6) メジコン配合シロップ 添付文書
7) アスベリン錠 添付文書
8) Indian J Pediatr.80(11):891-5,(2013) PMID:23592248
9) Neuropsychopharmacol Rep.44(1):176-186,(2024) PMID:38299253
10) Neuropsychiatr Dis Treat.10:147-51,(2014) PMID:24493927
11) Lung.198(1):13-21,(2020) PMID:31834478
「チペピジン」は相互作用リスクも低い
「デキストロメトルファン」は、代謝酵素CYP2D6によって代謝・分解されるため、このCYP2D6の働きを阻害・誘導する薬と併用すると血中濃度が大きく増減し、効果が弱まったり副作用が強まったりする恐れがあります6)。
その点、「チペピジン」にはこうした相互作用リスクも低く、特に併用に注意すべき薬はない7)ため、既に薬を色々と服用している人でも使いやすい薬と言えます。
回答の根拠③:鎮静・鎮痛作用もある「コデイン」~麻薬性鎮咳薬の副作用に注意
「コデイン」は、”最強の咳止め”というイメージで用いられることが多いですが、風邪などの際の急性の咳にはほとんど効果がありません12,13)。むしろ、「コデイン」には気道分泌を抑制する作用がある14)ため、痰の絡む湿った咳をしているときには、かえって症状を悪化させることもあります。
「コデイン」の効果を期待できるのは、3週間以上続くような「慢性の咳」、特に痰の絡まない乾いた咳15)ですが、その効果も「デキストロメトルファン」とほとんど変わりません16)。
ただ、「コデイン」は鎮咳作用のほかに鎮静・鎮痛作用も少し持っている14)ため、長引く夜間の咳で著しく睡眠を妨げられている場合や、咳のし過ぎで強い筋肉痛がある場合には、これらの作用による付加効果を期待して「コデイン」が選ばれることもあります。

12) J Clin Pharm Ther.17(3):175-80,(1992) PMID:1639879
13) J Pharm Pharmacol.49(10):1045-9,(1997) PMID:9364418
14) コデインリン酸/ジヒドロコデインリン酸塩散1% インタビューフォーム
15) Lung.202(2):97-106,(2024) PMID:38411774
16) Chest.144(6):1827-1838,(2013) PMID:23928798
「コデイン」は、麻薬作用による副作用に注意
「コデイン」は、「デキストロメトルファン」と比べても副作用の多い薬です17)。
たとえば、連用によって薬物依存を生じる恐れがあること、下痢止めとしても使われる薬のため便秘になりやすいこと、気道分泌を妨げるため気管支喘息には禁忌であること、12歳未満の小児では呼吸抑制という重篤な副作用を起こすリスクがある18)ため使用できないことなど、麻薬作用による副作用も多く、扱いには注意が必要です。
17) J Int Med Res.11(2):92-100,(1983) PMID:6852361
18) Indian J Pediatr.80(11):891-5,(2013) PMID:23592248
薬剤師としてのアドバイス:風邪の咳には「ハチミツ」も効果的
風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの感染症による「急性の咳」に対して、科学的にも有効だと確認されている咳止めの薬は乏しい、というのが実情です。そのため、”薬以外”のものにも目を向けて対応を考える必要があります。
たとえば、「ハチミツ」は風邪の咳に対して「デキストロメトルファン」とほぼ同等の高い効果が確認されています1)。特に、「ハチミツ」を寝る前に10g程度(ティースプーン1杯)ほど摂取すると、夜間の咳が減って睡眠の質も改善することが報告されている19)ことから、風邪のときの咳止めとして活用が推奨されています20)。
ただし、「ハチミツ」は1歳未満の子どもには使用しないよう注意が必要です(※乳児ボツリヌス症)。

あるいは、胸や喉に塗布する『ヴェポラッブ』も、子どもの咳症状には効果が報告されている21)ため、薬よりも優先的に試してみても良さそうです。
19) Pediatrics.130(3):465-71,(2012) PMID:22869830
20) BMC Pediatr.23(1):34,(2023) PMID:36670372
21) Pediatrics.126(6):1092-9,(2010) PMID:21059712
ポイントのまとめ
1. 『メジコン(デキストロメトルファン)』は、風邪の咳にも効果が確認されている貴重な咳止め
2. 『アスベリン(チペピジン)』は、副作用や濫用リスクが低く、小さな子どもでも使いやすい
3. 「コデイン」は、風邪の咳には不向きで副作用も多いが、鎮静・鎮痛作用も持っている
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| デキストロメトルファン | チペピジン | コデイン | |
| 先発医薬品名 | メジコン | アスベリン | – |
| 分類 | 非麻薬性鎮咳薬 | 非麻薬性鎮咳薬 | 麻薬性鎮咳薬 |
| 適応症 | 感冒・上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)・急性/慢性気管支炎・肺炎・肺結核・気管支拡張症に伴う咳嗽 | 感冒・上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)・急性/慢性気管支炎・肺炎・肺結核・気管支拡張症に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難 | 各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静、疼痛時における鎮痛、激しい下痢症状の改善 |
| 小児への使用 | 3ヶ月~ (※配合シロップ) | 下限の設定なし (1歳未満から使用可) | 12歳未満には禁忌 (※2019年から) |
| 風邪の咳に対する効果 | 期待できる | 報告がない | 否定されている |
| 濫用薬物としての報告 | 2022年から急増 | 特になし | 1970年代からある |
| 依存・耐性リスク | ない | ない | ある |
| 併用注意の薬 | MAO-B阻害薬、CYP2D6阻害作用を持つ薬、SSRI | 特になし | 中枢神経抑制作用を持つ薬、抗コリン作用を持つ薬、ワルファリン、ナルメフェン |
| 妊娠中の安全性評価 | オーストラリア基準【A】 | – | オーストラリア基準【A】 |
| 授乳中の安全性評価 | MMM【L3】 | – | MMM【L4】 |
| 剤型の規格 | 錠(15mg)、散10%、配合シロップ | 錠(10mg、20mg)、散10%、ドライシロップ2%、シロップ0.5% | 散(1%)、錠(20mg) |
| 先発医薬品の製造販売元 | シオノギファーマ | ニプロ | – |
| 同成分のOTC医薬品 | 『メジコンせき止め錠Pro』 | 『アスベリンせき止め錠Pro20』 | 総合感冒薬などに配合 |
+αの情報①:感染後咳嗽には、漢方薬や吸入薬という選択肢
風邪のあとに残った乾いた咳(感染後咳嗽)には、基本的に咳止めの薬がよく効きます。ただし、咳止めよりも漢方薬の『麦門冬湯』の方が効果は高いという報告もある22)ほか、症状がひどい場合には抗コリン薬の吸入薬23)などが優先的に使われます。
22) J Ethnopharmacol.178:144-54,(2016) PMID:26666732
23) Pulm Pharmacol Ther.29(2):224-32,(2014) PMID:25111667
+αの情報②:長引く咳には”咳止め”ではなく根本的な治療を
喘息は気道の炎症が原因のため、吸入ステロイドを用いた根本的な喘息治療が必要です。
逆流性食道炎による咳には、PPIやH2ブロッカーといった胃酸を抑える薬が必要です。
鼻炎を起こしていると、鼻水が喉に流れ込むことで咳が続く(後鼻漏)ことがあります。この場合、ステロイド点鼻薬などを使った鼻炎治療の方が効果的です。
また、子どもの咳は”家族の喫煙”が原因であることも多いため、禁煙が必要になるケースもあります。他にも、ACE阻害薬のように、使い始めに咳が出やすい薬もあります。

咳の症状があっても、いきなり咳止めの薬を使うのではなく、その原因に合わせた対処を行うことが大切です。
+αの情報③:「コデイン」の妊娠・授乳中の使用について
「デキストロメトルファン」と「コデイン」は、どちらも催奇形性が否定されています24,25)。ただ、「コデイン」では新生児に一時的な退薬症状が現れたという報告もあります26)。
また、「コデイン」を「CYP2D6」の代謝能力が強いUltrarapid Metabolizerの母親が服用した際、授乳によって代謝物の「モルヒネ」が胎児に移行し、胎児が呼吸抑制を起こして死亡した事例27)が報告されています(※この体質の人は日本人にも1%未満と少ないながらも存在します28))。
これらのことから、よほどの事情がない限りは、「コデイン」を妊娠中・授乳中に使うのは避けた方が無難です。
24) Chest.119(2):466-9,(2001) PMID:11171724
25) JAMA.246(4):343-6,(1981) PMID:7241780
26) Pediatrics.65(1):159-60,(1980) PMID:7355017
27) Lancet.368(9536):704,(2006) PMID:16920476
28) Medical Genetics Summaries. PMID:28520350
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











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