『インヴェガ』と『リスパダール』、同じ統合失調症の薬の違いは?~個人差と値段、用量や剤型の豊富さ
記事の内容
回答:効果に個人差の少ない『インヴェガ』、安価で用量・剤型の選択肢も豊富な『リスパダール』
『インヴェガ(一般名:パリペリドン)』と『リスパダール(一般名:リスペリドン)』は、どちらも統合失調症の治療薬である「セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA:Serotonin-Dopamine Antagonist)」です。
『インヴェガ』は、作用の個人差が少なく、服用も1日1回の服用で良い薬です。
『リスパダール』は、安価な上、用量や剤型の選択肢が豊富な薬です。

副作用を少なく抑えながら根気よく薬を続ける必要がある統合失調症の治療において、作用が安定していて服薬の手間も少ない『インヴェガ』は非常に優れた薬ですが、経済的負担を抑えたり、個々の細かなニーズに応えたりするには『リスパダール』の方が向いています。
回答の根拠①:個人差が出にくい「パリペリドン」~代謝酵素「CYP2D6」による活性化
「リスペリドン」は、体内で代謝酵素「CYP2D6」の作用を受けて代謝活性体「パリペリドン」に変換されて、治療効果を発揮します1)。
しかし、この「CYP2D6」の働きには個人差があります。そのため、「CYP2D6」がよく働く人では薬が速やかに活性体に変換されるため、よく効きます。一方で、「CYP2D6」があまり働かない人では薬がなかなか活性体に変換されない2)ため、薬の効きは悪くなります。

このように「リスペリドン」は、遺伝的素質によって薬の血中濃度が変動するため、薬の効果や副作用の現れ方は個人差が大きい3,4)、という問題がありました。
この点、既に代謝活性体になっている「パリペリドン」は、体内で代謝酵素による変換を受ける必要がありません5)。そのため、こうした遺伝的素質の影響を受けず、安定した治療ができるようになっています。
1) リスパダール錠 インタビューフォーム
2) Pharmacotherapy.40(7):632-647,(2020) PMID:32519344
3) Lancet Psychiatry.6(5):418-426,(2019) PMID:31000417
4) BMC Psychiatry.10;24(1):41,(2024) PMID:38200532
5) インヴェガ錠 インタビューフォーム
1日1回「朝食後」の服用で良い製剤工夫~服用のタイミングが指定されている理由
「パリペリドン」製剤である『インヴェガ』は、錠剤に「浸透圧放出システム(OROS)」と呼ばれる特殊な工夫が施されています5)。これよって、有効成分である「パリペリドン」は錠剤から徐々に放出されるため、1日1回の服用で、24時間に渡って安定した血中濃度を維持することができます。
この製剤工夫は、服薬の手間を減らしてくれるだけでなく、錐体外路障害の副作用を軽減する6)ことにも繋がっています。

ただし、この安定した治療効果を得るには、『インヴェガ』は「朝食後」に服用する必要があります。空腹時ではCmaxが36%、AUCが37%低下してしまうほか、夕食後などでは腸の蠕動運動の影響によって”薬が全て溶け出す前に排泄されてしまう”恐れがある5)からです。
6) Lancet.382(9896):951-62,(2013) PMID:23810019
回答の根拠②:安価で、用量や剤型の選択肢も豊富な「リスペリドン」
「パリペリドン」に比べて、「リスペリドン」は値段がかなり安めです。そのため、「リスペリドン」で安定した治療ができれば、経済的な負担は大きく抑えることができます。長期に渡る統合失調症の治療では、この値段差も重要な選択基準になります。

※錠剤の薬価の違い(2025年改訂時)
パリペリドン:3mg(227.80)、6mg(419.70)、9mg(528.90)
リスペリドン:1mg(11.90)、2mg(19.30)、3mg(26.20)
用量や剤型の面で、細かなニーズに応えやすい「リスペリドン」
「パリペリドン」は通常1日に6mgか12mgで使います5)が、「リスペリドン」は1日2~12mgと幅広い用量設定ができます1)。また、徐放製剤のため錠剤を割ることができない「パリペリドン」製剤と違って、「リスペリドン」の錠剤は半分に割るなどしてさらに細かな微調整をすることもできます。
他にも「リスペリドン」は錠剤だけでなく、口の中ですぐに溶けるOD錠、粉薬の散剤、液体の内用液と剤型も豊富です。
そのため、「リスペリドン」は個々の患者さんのニーズに合わせた柔軟な対応をしやすい薬、という特徴があります。
※用法用量の違い
パリペリドン:通常、1回6~12mgを1日1回
リスペリドン:通常、1回1~6mgを1日2回
薬剤師としてのアドバイス:錠剤は、自己判断で割ったり砕いたりしない
「パリペリドン」製剤の『インヴェガ』は、有効成分が錠剤から24時間かけてゆっくりと放出されるように設計されています。1日1回の服用で良い利便性や、錐体外路障害などの副作用が少ない特徴は、こうした製剤工夫によって得られているものです。
そのため、錠剤を半分に割ったり、あるいは噛み砕いたりしてしまうと、この特性は失われてしまうことになります。
「錠剤が大きくて飲みづらい」「薬の量をちょっと調節したい」といった理由で、自己判断で薬を割ったり砕いたりしないようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『インヴェガ(パリペリドン)』は、CYP2D6の遺伝多型による個人差が少なく、服用も1日1回
2. 『リスパダール(リスペリドン)』は、安価で、用量幅が広く剤型も豊富なため、細かなニーズに対応しやすい
3. 錠剤を不用意に割ったり砕いたりすると、本来の有効性・安全性を得られないことがある
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
| パリペリドン | リスペリドン | |
| 先発医薬品名 | インヴェガ | リスパダール |
| 適応症 | 統合失調症 | 統合失調症、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性 |
| 錠剤のタイプ | 浸透圧性の徐放製剤 | 通常 |
| 用法用量 | 1回6~12mgを1日1回(朝食後) | 1回1~6mgを1日2回 |
| 空腹時の服用 | Cmax:36%低下 AUC :37%低下 | 影響しない |
| 個人差 | 少ない(CYP2D6による活性化を受けない) | 多い(CYP2D6による活性化を受ける) |
| 妊娠中の安全性評価 | オーストラリア基準【C】 | オーストラリア基準【C】 |
| 授乳中の安全性評価 | MMM【L2】 | MMM【L2】 |
| 国際誕生年 | 2006年 | 1993年 |
| 世界での販売状況 | 世界91ヵ国 | 世界104ヵ国 |
| 剤型の規格 | 錠(3mg,6mg,9mg) | 錠(1mg,2mg,3mg)、OD錠(0.5mg,1mg,2mg)、細粒(1%)、内用液(1mg/mL)、筋注(25mg,37.5mg,50mg) |
| 先発医薬品の製造販売元 | ヤンセンファーマ | ヤンセンファーマ |
| 同成分のOTC医薬品 | (販売されていない) | (販売されていない) |
+αの情報:4週に1回の注射で良い「パリペリドン」製剤『ゼプリオン』
『ゼプリオン(一般名:パリペリドン パルミチン酸エステル)』は、4週間に1回の注射で治療ができる「パリペリドン」製剤です7)。内服薬で安定した治療できている場合、こうした注射薬に切り替えることで服薬の負担を大きく減らすことができます。
また、4週に1回の治療で効果が安定している場合には、さらに3ヶ月に1回の注射で治療ができる『ゼプリオンTRI』に切り替えることもできます7)。
7) ゼプリオン水懸筋注 インタビューフォーム
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。











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