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抗ヒスタミン薬 薬の特別な使い方

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アレルギーに胃薬の『ガスター』が効く?~ヒスタミン受容体の交叉性を利用した底上げ効果

回答:効果の底上げが可能

 アレルギーの治療には、『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』や『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』などの「抗ヒスタミン薬」を使うのが基本です。
 しかし、それだけでは治療効果が不十分なとき、本来は胃薬である『ガスター(一般名:ファモチジン)』を一緒に使うことで、治療効果の底上げができることがあります。

 これは、皮膚のヒスタミン受容体の約15%が『ガスター』でブロックできる「サブタイプ2(H2受容体)」であることから、主にアレルギー性皮膚疾患の治療の際に行われます。

回答の根拠:ヒスタミン受容体、サブタイプ1と2の交叉性

 「ヒスタミン」に反応する受容体には、サブタイプ1とサブタイプ2があります(厳密には他にもあります)。

 通常、花粉症や蕁麻疹などのアレルギーに関与しているのは、ヒスタミン受容体のうちサブタイプ1の「H1受容体」です。そのため、アレルギー性疾患には『ザイザル』や『アレグラ』などの「抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)」を使用します。

 また、サブタイプ2の「H2受容体」は主に胃に存在し、胃酸の分泌に関係しています。そのため、胃酸過多や消化性潰瘍には『ガスター』などの「H2ブロッカー(H2受容体拮抗薬)」を使用します。

 しかし、全てのアレルギーが「H1受容体」の関与で起きているわけではありません。特に、皮膚に存在するヒスタミン受容体のうち、15%程度はサブタイプ2の「H2受容体」であることがわかっています1,2)。
皮膚のヒスタミン受容体
 1) Urticaria Prim Care.35(1):141-57,(2008) PMID:18206722
 2) Am J Clin Dermatol.4(5):297-305,(2003) PMID:12688835

 そのため、特にアレルギー性皮膚疾患場合、『ガスター』などの「H2受容体拮抗薬」を併用することによって、「抗ヒスタミン薬」の効果を底上げし、アレルギー症状を緩和できる場合があります。
 実際、「抗ヒスタミン薬」と「H2受容体拮抗薬」を併用すると、効果を底上げできるとする報告もあります3)。

 3) Cochrane Database Syst Rev.(3):CD008596,(2012) PMID:22419335

薬剤師としてのアドバイス:保険適用外であることにも注意

 『ザイザル』や『アレグラ』といった「抗ヒスタミン薬」では十分な効果が得られないときは、通常は用量の範囲内で薬の量を増やしたり、あるいは2種の「抗ヒスタミン薬」を併用するといった方法がとられます4)。

 4) 日皮会誌.121(7):1339-88,(2011)

 ”量を増やすまでもないが、いまひとつスッキリしない”ような時に、効果の底上げを期待したり、「抗ヒスタミン薬」の眠気や口の渇きといった副作用を避けたりするために、『ガスター』を追加する方法がとられることがあります。

 しかし、こうした使用方法はあくまで保険適用外の使い方であることに注意が必要です。また、花粉症などの皮膚以外のアレルギーにも効果があるかどうかは、まだ明確ではありません。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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