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DPP-4阻害薬 似た薬の違い

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『ネシーナ』と『ザファテック』、同じDPP-4阻害薬の違いは?~化学構造と作用時間・服用回数

回答:『ネシーナ』の作用時間を長くした『ザファテック』は、週1回の服用で良い

 『ネシーナ(一般名:アログリプチン)』と『ザファテック(一般名:トレラグリプチン)』は、どちらも糖尿病の治療に使う「DPP-4阻害薬」です。

 『ネシーナ』の構造にフッ素(F)を付け加えることで、効き目が1週間続くように改良した薬が『ザファテック』です。
 
 糖尿病は自覚症状が少なく、治療も長期に渡ることも多いために、薬の飲み忘れが起こりやすいことが問題視されています。薬が1週間に1回だけで良ければ飲み忘れも減り、血糖値のコントロールもより行いやすくなることが期待されています。
 また、「DPP-4阻害薬」はもともと他の糖尿病薬よりも「低血糖」の副作用を起こしにくい薬ですが、『ザファテック』は間違って毎日飲んでしまっても「低血糖」を起こしにくいことも特徴です。

回答の根拠①:ほとんど同じ構造の薬~フッ素(F)の影響

 一般的にフッ素(F)は、塩素(Cl)などと比べると小さいため薬の活性にあまり影響を与えず、また炭素(C)との結合力が強力なため代謝酵素による影響も受けにくい傾向にあります。

 つまり、『ネシーナ』の構造の水素(H)をフッ素(F)で置き換えた『ザファテック』は、DPP-4阻害という薬の作用を変えないまま、代謝酵素などによる影響を受けにくくした薬と言えます1,2)。

 1) ネシーナ錠 インタビューフォーム
 2) ザファテック錠 インタビューフォーム

『ザファテック』はDPP-4阻害活性が1週間続く

 『ネシーナ』の半減期は14.3~21.8時間だったものが、『ザファテック』の半減期は53.4~56.4時間と、半減期は長くなっています1,2)が、1週間ずっと血中濃度が維持されるほど、半減期が長いわけではありません。
 しかし、『ザファテック』は1週間に1回の服用で「DPP-4阻害活性」77.4%という、『ネシーナ』を毎日服用した場合と同じだけの活性を維持することが確認されています1)。

 実際、1日1回の『ネシーナ』と1週間に1回の『ザファテック』とでは、HbA1c値を下げる効果に違いはなかったことが報告されています1)。

回答の根拠②:間違って毎日服用しても、副作用を起こしにくい

 1週間に1回の服用で良い『ザファテック』を間違って毎日服用しても、低血糖などの副作用は増えないことがわかっています2)。これは、『ザファテック』の半減期自体が長いわけではないことや、DPP-4阻害薬が単独では低血糖を起こしにくい薬でもあることが関係していると考えらえています。

 低血糖は心血管疾患などによる死亡率を高めるリスクになる3)ため、十分に注意して避ける必要があります。

 3) Diabetes Care.36(4):894-900,(2013) PMID:23223349

薬剤師としてのアドバイス:週1回の服用で、飲み忘れが減るとは限らない

 一般的には、週1回や月1回といったように、服用回数を減らすことで飲み忘れを減らすことができます。
 しかし、中には「薬は毎日飲む」という習慣を続けた方が良く、週1回や月1回になることで逆に飲み忘れが多くなってしまう恐れもあります

 どちらの服用方法が適しているかは、その人の生活習慣や薬に対する意識でも変わります。薬が『ザファテック』へ変更になり、「飲み忘れが減らせますよ」と医師・薬剤師から説明されたものの、かえって飲み忘れが増えてしまったような場合には、その旨を相談するようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『ザファテック』は、1週間に1回の服用で良いDPP-4阻害薬
2. 『ネシーナ』にフッ素(F)を導入したことで、『ザファテック』は半減期や作用活性も長くなっている
3. 1週間に1回の服用で、むしろ飲み忘れが増える場合もある

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆用法
ネシーナ:1日1回
ザファテック:1週間に1回

◆半減期
ネシーナ:14.3~21.8時間
ザファテック:53.4~56.4時間

◆剤型の種類
ネシーナ:錠剤(6.25mg、12.5mg、25mg)
ザファテック:錠剤(50mg、100mg)

◆製造販売元
ネシーナ:武田薬品工業
ザファテック:武田薬品工業

+αの情報①:同じ週1回の「DPP-4阻害薬」である『マリゼブ』

 『マリゼブ』も週1回の服用で良い「DPP-4阻害薬」です。

 『マリゼブ』は『ザファテック』とは異なり、肝臓で分解されずに腎臓で再吸収されるため、血液中に薬が長く残って効果が続きます。血液中に薬が長く残ることを前提にして作られた薬のため、重度の腎障害時でも用量を調節しながら使うことができます4)。

 4) マリゼブ錠 インタビューフォーム

+αの情報②:「DPP-4阻害薬」とは

 「DPP-4阻害薬」とは、「di-peptidyl peptidase-4 阻害薬」の略称で、「DPP-4」という酵素を阻害する薬です。

 人間が何かモノを食べると、その刺激に対して消化管は「インクレチン」と呼ばれるホルモンを分泌します。この「インクレチン」は膵臓からのインスリン分泌を促し、食事によって上がった血糖値を下げる働きをします。
DPP-4の作用~インクレチン
※「インクレチン」とは、GLP-1やGIPなどのホルモンの総称です。

 そして、インスリンが十分に機能して血糖値が下がってくると、「DPP-4」が「インクレチン」を分解するため、必要以上に血糖値が下がらないようにバランスが保たれています。
DPP-4の作用

 「DPP-4阻害薬」を使って「DPP-4」の作用を阻害すると、「インクレチン」の分解が抑えられるため、「インクレチン」によるインスリン分泌効果を維持し続けることができます。この作用によって血糖値を下げ、糖尿病の治療を行います1)。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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★「PharmaTribune」にてコラム「今月、世間を賑わした健康情報」連載中です。
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