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似た薬の違い 造血薬・EPO製剤

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『ネスプ』と『ミルセラ』、同じエリスロポエチン製剤の違いは?~適応症の差と、作用時間と注射回数

回答:適応の広い『ネスプ』、注射回数が少ない『ミルセラ』

 『ネスプ(一般名:ダルベポエチンα)』と『ミルセラ(一般名:エポエチンβペゴル)』は、どちらも腎性貧血の治療に使う造血薬の「エリスロポエチン」製剤です。

 『ネスプ』は腎性貧血だけでなく、骨髄異形成症候群による貧血にも適応があります。
 『ミルセラ』は「エリスロポエチン」製剤の中で最も作用時間が長く、少ない注射回数での治療ができます。
ネスプとミルセラ2
 従来の「エリスロポエチン」製剤は、症状が安定していても週に1~2回の注射を続ける必要があり、患者にとっても医療従事者にとっても負担が大きく、不便でした。
 『ネスプ』と『ミルセラ』は効果が長続きするように改良され、少ない注射回数で済む薬です。

回答の根拠①:適応症~腎性貧血と骨髄異形成症候群に伴う貧血

 「エリスロポエチン」は、赤血球の分化・増殖を促す造血ホルモンで、主に腎臓で作られています。そのため、腎臓の機能が衰えると分泌が減り、貧血を起こします。
エリスロポエチンと腎臓
 『ネスプ』や『ミルセラ』は、腎臓の代わりに「エリスロポエチン」を補給することで、こうした「腎性貧血」を治療する薬です1,2)。

 1) ネスプ注射液 添付文書
 2) ミルセラ注 添付文書

骨髄異形成症候群に伴う貧血

 「骨髄異形成症候群」とは、白血球・赤血球・血小板の元となる造血幹細胞に異常が起きる病気のことです。

 『ネスプ』は、この「骨髄異形成症候群」に伴う貧血に対しても造血効果を発揮し3)、必要な輸血量を減らす、あるいは輸血に依存しなくなるといった改善効果を示すことが報告されています4)。

 3) Br J Haematol.133(5):513-9,(2006) PMID:16681638
 4) Int J Hematol.102(4):401-12,(2015) PMID:26323997

 ただし、病状(IPSSによるリスク分類)によって使用制限があることに注意が必要です。

※IPSS(国際予後判定システム)によるリスク分類
 異常な血球細胞の量、染色体異常、どの系統の血球に異常が及んでいるか、といった観点から「骨髄異形成症候群」のリスクを評価する基準のこと

回答の根拠②:長い半減期で注射の回数を減らす

 『ネスプ』と『ミルセラ』は、どちらも従来の「エリスロポエチン」製剤と比べると半減期が大きく延長されています1,2,5,6)。
エリスロポエチンの作用時間と注射の回数
※「エリスロポエチン」製剤の半減期
エスポー(一般名:エポエチンα)・・・・・・静脈:4.76~5.01時間、皮下:22.2~22.4時間
エポジン(一般名:エポエチンβ)・・・・・・静脈:3.3~5.2時間、皮下:21.1~50.4時間
ネスプ(一般名:ダルベポエチンα)・・・・・静脈:32.11~48.67時間、皮下:77.09~98.28時間
ミルセラ(一般名:エポエチンβペゴル)・・・静脈:168~217時間、皮下:140~154時間

 5) エスポー注射液 添付文書
 6) エポジン注 添付文書

 そのため、これまでは症状が安定しても1~2週に1回の注射が必要であったところ、『ネスプ』や『ミルセラ』であれば2~4週に1回の注射で済むようになります1,2)。

最も長い半減期を持つ『ミルセラ』

 『ネスプ』も、症状が落ち着けば4週に1回の注射で済むようになりますが、治療の初期や、『エスポー』や『エポジン』といった他剤からの切り替え時には1週に1回の注射が必要な場合があります1)。

 しかし『ミルセラ』は、「エリスロポエチン」製剤の中では最も作用が長く、治療初期や他剤からの切り替え時でも2~4週に1回の投与で良く、最も注射の負担が少ない造血薬と言えます2)。

薬剤師としてのアドバイス:注射回数が減ると、色々な負担が軽くなる

 注射をするためには通院が必要です。
 更に、病院でも注射薬を調整する必要があり、調整に使った医療機器などの廃棄物も増えてしまいます。

 『ネスプ』や『ミルセラ』のように、少ない注射の回数で済む薬であれば、患者の痛みや通院の負担を減らすだけでなく、医療従事者の負担も減らすことができます。

ポイントのまとめ

1. 『ネスプ』と『ミルセラ』は、作用が長く少ない注射回数で済む「エリスロポエチン」製剤
2. 『ネスプ』は、腎性貧血以外にも適応がある
3. 『ミルセラ』は、最も作用が長続きし、切り替え時でも少ない注射回数で済む

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆適応症
ネスプ:腎性貧血、骨髄異形成症候群に伴う貧血(※IPSSによるリスク分類の中間-2と高リスクは除く)
ミルセラ:腎性貧血

◆薬の構造
ネスプ:「ヒトエリスロポエチン」に、「N-結合型糖鎖」を2本付加したもの
ミルセラ:「エポエチンβ」に、1分子の「直鎖メトキシポリエチレングリコール」を付加したもの

◆静脈注射の場合の半減期

ネスプ:32.11~48.67時間
ミルセラ:168~217時間

◆皮下注射の場合の半減期
ネスプ:77.09~98.28時間
ミルセラ:140~154時間

◆注射回数の幅
ネスプ:1~4週に1回
ミルセラ:2~4週に1回

◆製造販売元
ネスプ:協和発酵キリン
ミルセラ:中外製薬

+αの情報①:貧血治療には、鉄剤も必要

 『ネスプ』や『ミルセラ』でいくら「エリスロポエチン」を増やして造血させようとしても、赤血球の材料である「鉄」が不足している状態では、貧血は十分に改善されません。
 そのため、「鉄」が不足している場合には『フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄)』などの鉄剤を併せて使う必要があります。

 ただし、「鉄」は過剰になっても問題があるため、「腎性貧血」の治療中は定期的に鉄の過不足について評価することが推奨されています7)。

 7) 日本透析医学会.49(2):89-158,(2016) 「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」

+αの情報②:「エリスロポエチン」の可能性

 「エリスロポエチン」には造血作用の他にも、急性虚血/再灌流障害に対する軽減効果8,9)や動脈硬化10)などに対す多面的な保護効果が数多く報告されています。

 8) Nephrol Dial Transplant.21(2):330-6,(2006) PMID:16221709
 9) Br J Pharmacol.150(7):823-5,(2007) PMID:17351666
 10) Circulation.110(8):1006-12,(2004) PMID:15302785

 そのため、今後の研究によって「エリスロポエチン」を使った新たな治療方法の発見、適応症の追加が期待されています。

 
 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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★「PharmaTribune」にてコラム「今月、世間を賑わした健康情報」連載中です。
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