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似た薬の違い 高血圧

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『クレストール』と『メバロチン』、同じコレステロールの薬の違いは?~スタチンの強さと一次予防・二次予防の推奨

回答:『クレストール』は、『メバロチン』よりも作用の強いストロング・スタチン

 『クレストール(一般名:ロスバスタチン)』と『メバロチン(一般名:プラバスタチン)』は、どちらもLDL-C(悪玉コレステロール)値を下げる「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」です。

 『クレストール』は、作用が強力なストロング・スタチンです。
 『メバロチン』は、通常のスタンダード・スタチンです。

 安全性に大きな差はないため、現在は『クレストール』のような”ストロング・スタチン”を選ぶのが一般的ですが、そこまでの強い作用が必要ない場合や、副作用の問題などで薬を切り替える場合には”スタンダード・スタチン”を使うこともあります。

 

回答の根拠①:作用が強力な「ロスバスタチン」~現在の治療の中心”ストロング・スタチン”

 いわゆる”悪玉コレステロール”とされる、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)が増えると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を起こすリスクが高くなります。

 「ロスバスタチン」や「プラバスタチン」などの「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」は、このLDL-Cを減らし、心筋梗塞や脳卒中を防ぐ効果が確認されている薬です1,2,3)。
 中でも、「ロスバスタチン」は「プラバスタチン」よりも作用が強力4)で、通常の用量で使った場合により大きくLDL-C値を下げることができます。

1) J Am Coll Cardiol.52(22):1769-81,(2008) PMID:19022156
2) Lancet.393(10170):407-415,(2019) PMID:16214597
3) Am Heart J.210:18-28,(2019) PMID:30716508
4) Am J Cardiol.91(5A):3C-10C,(2003) PMID:12646336

 

作用が強力な”ストロング・スタチン”

 「ロスバスタチン」のように、LDL-C値を下げる効果が高い3種は、特に”ストロング・スタチン”と呼ばれています。

 LDL-Cは、血圧や血糖値と違って下げ過ぎによる明確なデメリットが少ないため、特に下限値は設けられていません。また、”ストロング・スタチン”の方が副作用は多い、ということもありません5)。
 そのため、現在の脂質異常症治療では作用が強力な”ストロング・スタチン”を選ぶことが多くなっています。

※スタンダード・スタチン
『メバロチン(一般名:プラバスタチン)』
『リポバス(一般名:シンバスタチン)』
『ローコール(一般名:フルバスタチン)』

※ストロング・スタチン
『クレストール(一般名:ロスバスタチン)』
『リバロ(一般名:ピタバスタチン)』
『リピトール(一般名:アトルバスタチン)』

5) Cardiovasc Drugs Ther.38(3):459-469,(2024) PMID:36447018

  

二次予防(再発防止)では、”ストロング・スタチン”が推奨

 まだ心筋梗塞などを起こした経験がない人の治療(一次予防)では、特定の薬が推奨されているわけではありません6)。
 しかし、既に心筋梗塞などを起こした経験がある人の再発予防(二次予防)では、より高い効果を得られる「ロスバスタチン」などの”ストロング・スタチン”が推奨されています7)。

6) 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022 年版」
7) 日本循環器学会「急性冠症候群ガイドライン2018年改訂版」

 

回答の根拠②:”スタンダード・スタチン”の「プラバスタチン」~治療の選択肢としての立ち位置

 基本的に、スタチンの心筋梗塞や脳卒中を防ぐ効果は、どの薬を選ぶかより、LDL-C値をどのくらい下げられたかによって大きく変わります8)。
 そのため、「プラバスタチン」などの”スタンダード・スタチン”でも十分にLDL-C値を下げることができれば、特に効果に大きな違いはありません9)。

 また、脂質異常症の治療でスタチンを使っている場合、何か副作用が現れた際にも別のスタチンに切り替えて治療を継続することがあります10)が、その際には作用が穏やかな薬として”スタンダード・スタチン”が選択肢に挙がるケースもあります。

8) Circ J.72(8):1218-24,(2008) PMID:18654003
9) Am Heart J.151(2):273-81,(2006) PMID:16442888
10) 日本肝臓学会、日本動脈硬化学会「スタチン不耐に関する診療方針2018」

 

「プラバスタチン」は水溶性のスタチンで、相互作用リスクも低い

 ”スタンダード・スタチン”の中でも特に「プラバスタチン」は、肝機能障害が少ない水溶性のスタチン11)で、なおかつ代謝酵素CYPによる影響をほとんど受けません12)。
 そのため、同じ水溶性のスタチンである「ロスバスタチン」や、相互作用リスクの低い「ピタバスタチン」といった”ストロング・スタチン”から安全に切り替えやすい貴重な選択肢になっています。

11) J Clin Lipidol.11(3):624-637,(2017) PMID:28506385
12) メバロチン錠 インタビューフォーム

 

薬剤師としてのアドバイス:「LDL-C値を下げること」が治療の目的ではない

 「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」を飲むとLDL-C値はよく下がるため、この時点で治療が”完了”したと思って服薬をやめてしまう人は少なくありません。
 しかし、脂質異常症を治療する目的は、LDL-C値を下げることではなく、心筋梗塞や脳卒中を防ぐことにあります。そのため、LDL-C値が下がって正常範囲内に収まった場合、次は”その状態を維持し続ける”必要があります。

 実際、「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」は、期待できる余命が3~5年未満になってくるくらいまでは、”服用するメリット”が副作用リスクやコストといったデメリットを上回る13)と評価されているなど、長く人生に貢献してくれる薬です。
 高齢者であっても、不用意に薬をやめてしまうと、心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクは再び高まってしまう13,14)ため、よほどの事情がない限りは治療を継続することをお勧めします。

※例:高齢者が服薬を中止した場合のリスク14)
心筋梗塞などの既往歴がない人(一次予防):薬を中止した112人に1人が心筋梗塞を起こす
心筋梗塞などの既往歴がある人(二次予防):薬を中止した77人に1人が心筋梗塞を起こす

13) Eur Geriatr Med.14(4):625-632,(2023) PMID:31362307
14) JAMA Netw Open.4(12):e2136802,(2021) PMID:34854906

 

ポイントのまとめ

1. 『クレストール(ロスバスタチン)』は、作用が強力な”ストロング・スタチン”で、特にハイリスク患者や二次予防では優先的に使われる
2. 『メバロチン(プラバスタチン)』は、通常の”スタンダード・スタチン”で、治療のオプションになる
3. LDL-C値が下がっても、それを”維持し続ける”ために治療を継続することが重要

 

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

ロスバスタチンプラバスタチン
先発医薬品の名称クレストールメバロチン
スタチンの分類ストロング・スタチン(水溶性)スタンダード・スタチン(水溶性)
主な適応症高脂血症、家族性高コレステロール血症高脂血症、家族性高コレステロール血症
用法1日1回1日1回または2回
1回の場合は夕食後が望ましい
血中濃度の半減期20時間2.7時間
用量の幅1日2.5~20mg1日10~20mg
ガイドラインでの位置付け(一次予防)6)第一選択薬第一選択薬
ガイドラインでの位置付け(二次予防)7)優先
併用禁忌の薬シクロスポリンなし
国際誕生年2002年1989年
妊娠中の安全性評価オーストラリア基準【D】オーストラリア基準【D】
授乳中の安全性評価MMM【L3】MMM【L3】
世界での販売状況世界120ヵ国以上世界110ヵ国以上
規格の種類錠(2.5mg,5mg)、OD錠(2.5mg,5mg)錠(5mg,10mg)、細粒(0.5%,1%
代表製剤の製造販売元アストラゼネカ第一三共
同成分のOTC医薬品(販売されていない)(販売されていない)

 

+αの情報:”ストロング・スタチン”は、朝でも夕でも服用できる

 コレステロールは夜間に体内で合成されます。そのため、このコレステロール合成を阻害する「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」は、朝より夕食後に飲んだ方が高い効果を得られることが知られています。

 このことから、「プラバスタチン」などの”スタンダード・スタチン”は夕食後に服用する必要がありました12)。

 一方で、「ロスバスタチン」などの”ストロング・スタチン”は作用が長続きするため、朝服用でも夕服用でも効果に差はなく15)、特に服用のタイミングに関する縛りもありません16)。

 ”夕食後”ではよく服用を忘れる、という人の場合、服用のタイミングの観点から”ストロング・スタチン”が選ばれることもあります。

15) J Clin Pharmacol.36(7):604-9,(1996) PMID:8844442
16) クレストール錠 インタビューフォーム

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

    • 匿名
    • 2017年 9月 11日
      Warning: Trying to access array offset on false in /home/fizzdi/fizz-di.jp/public_html/wp-content/themes/mag_tcd036/functions.php on line 582

    ネットや週刊誌の情報に惑わされ、勝手に服用を止めないこととありますが、ネットや週刊誌の情報のおかげで助かったという人の調査というか、統計はほとんどありませんね。私の家の近くには、幸か不幸か、医院がたくさんあり迷います。住民も迷っています。良い医師を選ぶのは至難の業です。医院選びを間違え、死に損ねた人も階下にいます。ですから、私が言いたいのは、医師にもいろいろあって、あなたが考えているような医師は、ほんの一握りであるという事です。私はよく思うのですが、医院の医師は不要ではないかと。医師の仕事内容をみると全て、ロボットの方が間違いもなく適格に、迅速、適正、効果的に行えると思っています。手術等の施術を行わない、問診等の事を行う医師についてですが。
    私は、現在3種類の薬を何年も服用し、点眼剤もしていますが、服用している病気の眼病に限らず、症状は一向に治る気配がありません。薬は、栄養剤みたいなものと考えた方が気が楽です。自分で情報を集め考えた方が、あって数分の問診の稚拙さを一般のひとにも知っていただき、ネットや週刊誌の情報に惑わされ、勝手に服用を止めないことなどという言葉に惑わされない方が賢明だと思います。勝手に服用やめた結果、その薬の影響で亡くなったと書かれた数は、その薬を飲み続けた結果、飲まない場合に比べて、寿命を縮めたという数値は調査していない、できないことから、この論の危うさを感じます。

      • Fizz-DI
      • 2017年 9月 11日
        Warning: Trying to access array offset on false in /home/fizzdi/fizz-di.jp/public_html/wp-content/themes/mag_tcd036/functions.php on line 582

      >ネットや週刊誌の情報のおかげで助かったという人の調査というか、統計はほとんどありませんね。
      自己判断で薬を変更・中断した場合に病状が悪化し、入院・死亡する結末に至るという報告はたくさんあります。そもそも、使ったら生存率が上がる等の効果が示されたものが医薬品です。自己判断した方が良いということはありません。

      >医師にも色々あって
      これは確かにごもっともですが、一握りであるとはあまりに偏見に満ちたご意見かと思われます。もっと医師と密にコミュニケーションをとるべきです。もしコミュニケーションをとれないのであれば、その場合は病院を変えるべきです。

      薬を飲んでも症状が良くならないというご体験から、診察や薬に対して非常に不信感を抱いておられることと思います。これは同じ状況になれば私も似たことを考えるかもしれません。
      しかし、だからといって「自己判断した方が良い、週刊誌を信じた方が良い」というのはあまりに暴論です。週刊誌の情報を信じて薬を止めて症状が悪化した場合、出版社は何の責任をとってはくれません。

      何も「医師の言うことを無条件で100%信じろ」と言っているのではありません。ご自身の1つしかない身体、最も適切な治療を行い、将来に後悔しない選択をするために、情報はきちんと精査して収集して頂きたいと思います。気になることがある際は、ネットや週刊誌の情報から自己判断するのではなく、専門家の意見を聞いて頂きたいと思います。

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薬の比較と使い分け100(2017年)
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■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
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医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
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薬ゼミ、診断と治療社
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【講義・講演等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
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