『アリセプト』と『メマリー』、同じ認知症の薬の違いは?~作用の違いと併用の効果


回答:作用が異なる、全く別の薬

 『アリセプト(一般名:ドネペジル)』と『メマリー(一般名:メマンチン)』は、どちらも認知症の進行を食い止める薬です。

 脳の働きは、様々な神経伝達物質のやりとりによって成立していますが、認知症ではこのやりとりに異常が起こっています。
 そのため、その異常を薬で修正することで、認知症を治療することができます。
アリセプトとメマリー2
 『アリセプト』は、認知症で弱まっている神経伝達物質「アセチルコリン」の働きを増やす「コリンエステラーゼ阻害薬」です。
 『メマリー』は、認知症で強まっている神経伝達物質「グルタミン酸」の働きを減らす「NMDA受容体拮抗薬」です。

 治療を始める場合にはどちらを選んでも差はありませんが、副作用の傾向も異なるため、その人の症状や生活環境によっても薬を選ぶことがあります。また、2つを併用することで、より高い治療効果が得られることもあります

 ただし、どちらも認知症の進行を「食い止める」薬であって、既に認知症が進行してしまった状態から「脳を復元する」薬ではありません。そのため、認知症は1日も早く気付き、早めに治療を始めることが大切です。

 

回答の根拠①:作用の違い~コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬

 『アリセプト』と『メマリー』は、それぞれ全く異なる作用の薬です。
 

『アリセプト』~「コリンエステラーゼ阻害薬」の作用機序

 アルツハイマー型認知症患者の脳では、神経伝達物質の一つ「アセチルコリン(Ach)」の活性が低下していることがわかっています1)。

 『アリセプト』などの「コリンエステラーゼ阻害薬」は、「アセチルコリン」を分解してしまう「コリンエステラーゼ」を阻害することで、脳内での「アセチルコリン」活性を上昇させます1)。
アリセプトの作用とアセチルコリン
 1) アリセプト錠 インタビューフォーム

 「コリンエステラーゼ阻害薬」には『アリセプト』の他にも、『レミニール(一般名:ガランタミン)』や貼り薬の『リバスタッチ(一般名:リバスチグミン)』などがあります。


『メマリー』~「NMDA受容体拮抗薬」の作用機序

 アルツハイマー型認知症患者の脳では、神経伝達物質の一つ「グルタミン酸」が過剰に働いていることがわかっています2)。

 『メマリー』は、この「グルタミン酸」が作用する「NMDA(N-メチル-D-アスパラギン)受容体」をブロックすることで、脳内の「グルタミン酸」の活性を正常化します2)。
メマリーの作用とグルタミン酸
 2) メマリー錠 インタビューフォーム

 現在のところ、「NMDA受容体拮抗薬」は『メマリー』だけです。



回答の根拠②:適応症の違い

 『アリセプト』と『メマリー』は、どちらの薬もガイドラインで最も推奨度の高い【グレードA】と評価されている薬です3)。そのため、初めて治療をする際にはどちらを選んでも問題ありません。

 3) 日本神経学会 「認知症疾患治療ガイドライン(2010)」

 しかし、添付文書の記載では、適応症の重症度に若干の違いがあります。

※『アリセプト』の適応症 1)
アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症の進行抑制

※『メマリー』の適応症 2)
中等度から高度のアルツハイマー型認知症の進行抑制


重症例に『メマリー』が推奨される理由

 6ヶ月以上『アリセプト』を服用している中等度から高度のアルツハイマー型認知症患者に対して、そのまま『アリセプト』を継続した場合と、『メマリー』に切り替えた場合とを比較すると、『メマリー』に切り替えた患者の方がより高い効果が得られたとする報告があります4)。

 4) JAMA.291(3):317-24,(2004) PMID:14734594

 このことから、一般的に重症例には『メマリー』が処方される傾向にあります。


レビー小体型認知症に対する保険適用と効果

 『アリセプト』はレビー小体型認知症にも適応があります1)。
 一方、『メマリー』にもレビー小体型認知症に対する効果を報告する研究がいくつか存在しますが5)、現在のところまだ保険適用はありません2)。

 5) 老年精神医学雑誌.23(9):1079-1082,(2012)



回答の根拠③:副作用の違い

 薬を飲み始めた初期には副作用が出る傾向がありますが、特徴的な副作用に違いがあります。

 『アリセプト』では下痢や嘔吐が多く、『メマリー』ではめまいが多く現れます。

 そのため、普段から下痢や嘔吐症を持っている患者には軽度であっても『メマリー』を選択する、普段からめまいのある患者には中等度であっても『アリセプト』を選択する、といったケースが考えられます。

※『アリセプト』の主な副作用1)
食欲不振・吐き気・下痢(1~3%未満)

※『メマリー』の主な副作用2)
めまい・頭痛(1~5%未満)



薬剤師としてのアドバイス:今は、進行を食い止める薬しかない

 『アリセプト』や『メマリー』などの認知症の薬は、認知症の症状が進行することを食い止める薬です。

 現在の医療では、既に認知症が進行してしまった状態から、脳の機能を復元することはできません。そのため、認知症の兆候に1日でも早く気づき、1日でも早く「進行を食い止める」治療を開始することが重要です。

 その際、「レビー小体型認知症」では初期症状が物忘れとは限らないため、気付くのが遅れる傾向にあります。「認知症=物忘れ」と思い込まず、早めに主治医に相談することをお勧めします。



+αの情報:併用による効果

 『アリセプト』と『メマリー』は、2種を併用することによって、認知症の進行をより抑えることができるという報告もあります4)。

 『アリセプト』や『レミニール』などの「コリンエステラーゼ阻害薬」と、『メマリー』の飲み合わせは特に問題もないため、より高い効果を期待して併用することがあります。



添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆適応症
アリセプト:アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症の症状進行抑制
メマリー:中等度~高度のアルツハイマー型認知症の症状進行抑制

◆用法
アリセプト:1日1回
メマリー:1日1回

◆飲み始めによくある副作用
アリセプト:食欲不振・吐き気・下痢(1~3%未満)
メマリー:めまい・頭痛(1~5%未満)

◆剤型
アリセプト:錠・D錠・内服ゼリー(3mg、5mg、10mg)、ドライシロップ(1%)
メマリー:錠・OD錠(5mg、10mg、20mg)

◆同種同効薬
アリセプト:コリンエステラーゼ阻害薬の『レミニール』・『リバスタッチ』・『イクセロン』
メマリー:なし

◆製造販売元
アリセプト:エーザイ
メマリー:第一三共



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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