■サイト内検索


スポンサードリンク

似た薬の違い 外用剤

/

『オイラックス』と『オイラックスH』、同じ痒み止めの塗り薬の違いは?~ステロイドの有無

回答:『オイラックスH』には「ステロイド」が入っているため強力

 『オイラックス(一般名:クロタミトン)』と『オイラックスH(一般名:クロタミトン + ヒドロコルチゾン)』は、どちらも痒み止めの薬です。

 『オイラックスH』は、『オイラックス』にステロイドの「ヒドロコルチゾン」を追加した薬で、より強力です。
オイラックスとオイラックスH
 『オイラックスH』に入っているステロイドは弱いもので量も少ないですが、使う回数や期間には少し注意する必要があります。

回答の根拠①:『オイラックス』で「痒み」が治まるメカニズム

 通常、ヒトが「痒み」を感じたときは、爪で引っ掻くことで「痒み」を紛らわせる行動をとります。これは、引っ掻いた強い刺激によって、「痒み」の感覚を隠してしまう、という意味があります。
痒みと引っ掻く刺激
 この原理と同じように、『オイラックス』には軽い刺激感・灼熱感を皮膚に与えることで、痒みの感覚を隠してしまう効果があります1)。

 1) オイラックスクリーム インタビューフォーム

引っ掻くと、皮膚はダメージを受ける

 健康な皮膚であれば、引っ搔いて少しくらい傷ができてもすぐに回復しますが、長引く「痒み」に対して何度も繰り返し引っ掻いていると、皮膚の傷は蓄積し、ボロボロになっていきます。
 皮膚がボロボロになると「バリア機能」も弱まり、皮膚が過敏になります。すると、ますます「痒み」は強まっていってしまいます。
痒みの悪循環
 この爪で引っ掻く行動の代わりに『オイラックス』を使うことで、この悪循環を止め、皮膚への負担を減らすことができます。

回答の根拠②:『オイラックスH』に含まれる「ヒドロコルチゾン」

 『オイラックスH』は、『オイラックス』にステロイドである「ヒドロコルチゾン」が配合されています。

※1g中の有効成分 1,2)
オイラックス・・・・クロタミトン100mg
オイラックスH・・・クロタミトン100mg + ヒドロコルチゾン2.5mg

 2) オイラックスHクリーム インタビューフォーム

 そのため、痒みや腫れを抑える効果は『オイラックスH』の方が『オイラックス』よりも強力で、虫刺されなどに対する適応もあります2)。

『オイラックスH』のステロイドは弱く、ごく微量でしかない

 「ヒドロコルチゾン」は、ステロイドの中でも最も作用の弱い「Ⅴ群:weak」に分類されるものです。
 更に、「ヒドロコルチゾン」をステロイド外用剤として使用する場合には1%の濃度で使いますが、『オイラックスH』では0.25%(1g中に2.5mg)と、4分の1の濃度しかありません2)。
オイラックスHのステロイドの強さと量
 このことから、『オイラックスH』はステロイド外用剤としては扱いませんが、あまり大量に長期で使うことは避けるなど、「ステロイド」としての注意は必要です。

薬剤師としてのアドバイス:痒み止めは、根本治療にはならない

 『オイラックス』や『オイラックスH』といった痒み止めの薬は、皮膚を引っ掻く代わりに使うことで皮膚への負担を減らすことができますが、痒みの原因を治療できるわけではありません。

 皮膚に強い炎症が起きている場合には、痒み止めで誤魔化し続けるよりも「ステロイドの塗り薬」を使って早く治してしまった方が良い場合があります。
 特に、皮膚の炎症が長引くと、皮膚に色素沈着が起きて黒っぽくなってしまうこともあります。

 また、長く続く痒みは、水虫などの感染症が原因である場合もあります。痒み止めを使っても治りが悪い場合には、一度皮膚科を受診することをお勧めします。

ポイントのまとめ

1. 『オイラックス』は、皮膚を引っ掻く代わりに使うことで、皮膚の傷・負担を減らすことができる
2. 『オイラックスH』には、ステロイドの「ヒドロコルチゾン」が含まれているため強力
3. 痒み止めは根本治療にならないため、治りが悪い場合は使い続けず、皮膚科を受診する

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆1g中の有効成分
オイラックス:クロタミトン100mg
オイラックスH:クロタミトン100mg + ヒドロコルチゾン2.5mg

◆適応症
オイラックス:湿疹、蕁麻疹、神経皮膚炎、皮膚そう痒症、小児ストロフルス
オイラックスH:湿疹・皮膚炎群、皮膚そう痒症、小児ストロフルス、虫さされ、乾癬

◆1日の使用回数
オイラックス:1日数回
オイラックスH:1日1~数回

◆製造販売元
オイラックス:ノバルティス
オイラックスH:ノバルティス

+αの情報:他の痒み止めとの違い

 ひとことに「痒みを抑える薬」と言っても、その作用は様々です。
 
◆抗ヒスタミン薬(例:『レスタミン(一般名:ジフェンヒドラミン)』)
 アレルギー症状の原因になる「ヒスタミン」を抑えることで、痒みを抑えます。

◆局所麻酔薬(例:「リドカイン」、「ジブカイン」)
 皮膚や粘膜の知覚神経を麻痺させる「麻酔作用」によって、痒みを抑えます。

◆「l-メントール」
 ハッカの成分で、使ったときの清涼感によって痒みを紛らわせます。刺激になることもあるので、医療用の薬には使われていません。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

前のページ

次のページ

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

■おすすめ記事

  1. 『ヒアレイン』と『ジクアス』、同じドライアイ治療薬の違いは?…
  2. 【新刊のお知らせ】「薬剤師のための 医療情報検索テクニック」…
  3. 『アイトロール』と『ニトロール』、同じ硝酸薬の違いは?~初回…
  4. 【反論】「ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない…
  5. 不要な薬を薬局に返せば、返金してもらえる?~健康保険法上の解…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

PAGE TOP