『クラビット』と『フロモックス』、同じ抗生物質の違いは?~抗生物質の使い分け、強弱の基準


回答:退治できる細菌の種類が違う

 『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』と『フロモックス(一般名:セフカペンピボキシル)』は、どちらも細菌を退治する抗生物質(抗菌薬)です。

 一つの抗生物質で全ての細菌を退治できる、というわけではありません。薬によって、退治できる細菌、退治できない細菌が、それぞれあります。
クラビットとフロモックス
 そのため、ひとことに「感染症」と言っても、その原因となっている細菌の種類によって、抗生物質はきちんと使い分ける必要があります。



回答の根拠①:抗菌スペクトル~薬と細菌の相性

 「細菌」の種類は、現在確認されているだけでも6,800種以上、非常に様々なタイプの細菌が存在しています。
 これら全ての種の細菌に、まんべんなく効く薬は存在しません。薬によって得意とする細菌の種、苦手とする細菌の種、つまり”相性”があります。

 この”相性”は「抗菌スペクトル」と呼ばれています。


『クラビット』と『フロモックス』の抗菌スペクトルの例

 『クラビット』と『フロモックス』も、得意とする細菌の種が異なります1)。

 大腸菌や緑膿菌、レンサ球菌には、『クラビット』と『フロモックス』はどちらも効果があります。
 食中毒の原因菌として有名な「サルモネラ属」の細菌には、『クラビット』は効果がありますが、『フロモックス』は効果がありません。
 日和見感染の原因菌となる「バクテロイデス属」の細菌には、『クラビット』は効果がありませんが、『フロモックス』は効果があります。

 1) 南江堂 「今日の治療薬(2016年版)」

 このように、抗生物質には得意・不得意といった”相性”で使い分けます。
 そのため、抗生物質が変更になった場合は、「強い抗生物質に変わった」というよりも、「より原因菌の退治を得意とする抗生物質に変わった」と考えるのが妥当です。

 また、状況によっては得意分野の違う抗生物質を併用することもあります。



回答の根拠②:抗菌力を発揮できる飲み方の違い

 抗生物質は、その血中濃度を一度”ガツン”と高めた方が抗菌力が高まるのか、ある程度の血中濃度を長時間維持した方が抗菌力が高まるのか、種類によって異なります

 『クラビット』は、血中濃度を一度”ガツン”と高めた方が抗菌力が高まります。そのため、通常は1日量を1回にまとめて、1日1回で服用します2)。
濃度依存性の抗生物質

 『フロモックス』は、ある程度の血中濃度を長時間維持した方が抗菌力が高まります。そのため、通常は1日量を3回に分けて、1日3回で服用します3)。
時間依存性の抗生物質

 2) クラビット錠 添付文書
 3) フロモックス錠 添付文書

 そのため、用法を守らずに抗生物質を使うと効果が弱まり、治療がうまく進まないだけでなく、「耐性菌」を生む原因にもなります。



薬剤師としてのアドバイス:抗生物質は処方された時に必ず飲み切り、残さない

 「次に似た症状になった時のため」と、薬の服用を途中で止めて、抗生物質を置いておく人が少なくありません。
 しかし、似た感染症であっても、原因菌が異なれば使うべき抗生物質も変わります。同じ抗生物質が適しているとは限りません。

 また、そもそも抗生物質は1回や2回飲むだけでは効果がなく、ある程度の期間は飲み続けなければ意味がありません。1回や2回だけ抗生物質を飲むような中途半端な使い方は、細菌に「耐性」を与えるためのトレーニングをしているようなもので、全くの逆効果です。

 このように、抗生物質は使い方が非常に難しく、自己判断で調節したり選んだりして使える薬ではありません(※そのため市販もされていません)。処方された時には、症状が治まってきても必ず最後まで飲み切って、残さないようにしてください。


 ただし、脱水症状を起こす恐れのある酷い下痢をしている場合や、便に血液や粘液が混じっているなど、危険な副作用の兆候がある場合は一旦使用を中止し、すぐに主治医と相談するようにしてください。



+αの情報①:「細菌」と「ウイルス」は全くの別物

 「抗生物質」は、「細菌」を退治する薬です。「ウイルス」には全く効果がありません
抗生物質~細菌とウイルス
 季節性のインフルエンザやヘルペスなどは「ウイルス」が原因で起こる感染症のため、「抗生物質」では治療できません。
 また、いわゆる”風邪(風邪症候群)”も、ほとんどは「ウイルス」が原因の感染症であることにも注意が必要です。



+αの情報②:「抗生物質」と「抗菌薬」

 「抗生物質」は、細菌を退治したり増殖を抑えたりする物質のうち、細菌そのものが作り出した物質(ペニシリンなど)のことを指します。
 現在使われている薬は化学合成で作られているため、厳密には「抗菌薬」が正しい表現です。

 医師・薬剤師などの専門家は「抗菌薬」という表現を使うのは、このためです。

 ただし、本Q&Aでは一般的な知名度を考慮して「抗生物質」と表記しています。



 ~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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