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薬の誤解 市販薬・OTC

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病院で処方された風邪の薬が多い。市販の風邪薬を使う方が、薬は少なくて済む?~1錠に含まれる薬の種類

回答:逆、むしろ市販薬の方が薬は多くなりやすい

 風邪などの症状で病院にかかった際、何種類もの薬を処方され、「こんなにたくさん薬を飲まないといけないのか?」と驚く人は少なくありません。
 そして、「こんなたくさんの薬を飲むくらいなら、市販の風邪薬で済ませた方が良いのでは」と感じてしまう人もおられます。

 しかし、見た目は病院で処方された薬(の数)が多くても、実際に飲むことになる薬(の種類)は市販の風邪薬を使う方が多くなる傾向があります。
 これは、病院で処方される薬は通常、1つの錠剤・カプセルに1つの薬しか入っていないのに対し、市販の風邪薬は1つの錠剤・カプセルに何種類もの色々な薬がまとめて入っているからです。
風邪に処方される薬の量と、市販の風邪薬の量
 また、感染症の根本治療に必要な抗生物質は、市販されていません。風邪だと思い込んで感染症を放置すると悪化してしまう恐れもあります。風邪薬を使っても治りが悪い場合には、一度病院を受診するようにしてください。

 

回答の根拠①:見た目の錠数ではなく、有効成分の種類で考える

 病院で処方される医療用医薬品は、例外を除いて1つの錠剤・カプセルに1つの有効成分しか入っていません。

 そのため、風邪でくしゃみ・鼻づまり・咳・発熱がある場合、医師はそれぞれの症状に適した薬を1つずつ処方することになります。
 その結果、くしゃみには抗ヒスタミン薬、鼻づまりには抗ロイコトリエン薬咳には咳止め熱を下げるために解熱鎮痛薬・・・、といったように「錠剤やカプセルの数」は多くなる傾向にあります。

 一方、市販の風邪薬は1つの錠剤・カプセルに何種類もの有効成分がまとめて配合されています。そのため、見た目は「錠剤やカプセルの数」が少なくとも、実際には何種類もの薬を飲んでいることになります
市販の風邪薬と医療用の薬
 つまり、薬の量を比較する場合には、見た目の錠剤・カプセルの個数ではなく、有効成分の種類で比べる必要があります。

実際の市販薬に含まれる薬の種類

 例えば、市販の風邪薬である『コルゲンコーワIB錠TX』には、7種類の薬が含まれています。
 
※含まれる7種類の薬
d-クロルフェニラミン (抗ヒスタミン薬:『ポララミン』
無水カフェイン (鎮痛薬、抗ヒスタミン薬の眠気対策)
イブプロフェン (解熱鎮痛薬:『ブルフェン』)
トラネキサム酸 (喉の炎症や腫れを抑える薬:『トランサミン』)
ジヒドロコデインリン酸 (咳止め薬:『フスコデ』等)
dl-メチルエフェドリン (咳止め)
グアイフェネシン (咳止め・去痰薬:『フストジル』)

 医療用医薬品で同じだけの薬を飲もうとすると、『ポララミン』+『ブルフェン』+『トランサミン』+『フスコデ』・・・といったように1つずつ薬を処方するため、見た目の錠剤・カプセルの数は多くなっていきます。

 つまり、病院で6種類の薬を処方された場合でも、この市販の風邪薬1つより、飲むことになる薬の種類は少ないことになります。

回答の根拠②:風邪に抗生物質は要らないが、本当に風邪かどうかの診断は難しい

 風邪はウイルス性の感染症です。そのため、細菌を退治する抗生物質は効きません。また、安静にしていれば1~数日で治るため、必ずしも薬が必要というわけでもありません。

 しかし、多くの人は「熱・鼻・くしゃみ・咳」といった症状があるものを全て「風邪」だと思い込んでしまう傾向にあります。自分では「風邪」だと思っていても、実際には細菌の感染で起こる中耳炎や扁桃炎だったということは少なくありません。
風邪と抗生物質~ウイルス性の感染症と細菌性の感染症
 数日安静にしていても治らない、風邪薬を飲んでも治らないといった場合には、こうした別の感染症を疑う必要がありますので、早めに病院を受診するようにしてください。

抗生物質は市販されていない

 1つの抗生物質が全ての細菌を退治できるわけではなく、抗生物質は感染症の原因となっている細菌のタイプによって明確に使い分ける必要があります。更に、同じ抗生物質でも感染症や細菌のタイプによっては、使う量や期間・飲む回数なども変わります

 これを間違ってしまうと、細菌が抗生物質に対して「耐性」を獲得してしまい、次から薬が効かなくなってしまう恐れがあります。

 このように、抗生物質は痛み止めのように自己判断で気軽に使える薬ではないため、市販もされていません。また、家に残っていたり家族がもらっていたりする抗生物質を勝手に使うことも、大変危険です。絶対に止めてください。

薬剤師としてのアドバイス:市販薬は、宣伝文句ではなく有効成分で選ぶ

 市販の薬は多くの人に共通する症状のパターンに基づいて、予めたくさんの薬を配合してあります。1つの薬で色々な症状を抑えられるため、多くの人にとって非常に便利です。
 しかし、きちんと適切に薬を選ばなかった場合、咳がないのに咳止めの薬を飲んだり、熱がないのに解熱剤を飲んだりしてしまうことになります。

 市販の薬を選ぶ際には、「冬の風邪に」とか「咳や鼻などの症状に」といった宣伝文句で選ぶのではなく、含まれている有効成分を見て選ぶ必要があります。
 これによって、自分に不必要な成分の薬を避けたり、あるいは眠気の出ない風邪薬を選んだりすることができます。

 こうした有効成分による薬選びの際には、ぜひ薬剤師または登録販売者を頼って欲しいと思います。

+αの情報①:インフルエンザの疑いがある時は、解熱鎮痛薬に注意

 インフルエンザの際には、解熱鎮痛薬の種類に注意が必要です。特に子供の場合、安易に解熱鎮痛薬を使うと「インフルエンザ脳症」という合併症を起こす恐れもあります。

 高熱や節々の痛みがあるなど、インフルエンザの疑いがある場合には市販の薬を使うのではなく、必ず病院を受診するようにしてください。

+αの情報②:医療用医薬品の例外~配合剤

 医療用医薬品にも、複数の有効成分が含まれているものがあります。

 ただし、こういった配合剤には必ず『PL配合顆粒』や『シナール配合顆粒』、『ハーボニー配合錠』、『コディオ配合錠』のように、「配合」という単語が入っています。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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薬の比較と使い分け100(2017年)
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