スポンサードリンク

消化性潰瘍治療薬 ピロリ菌

/

PPI服用中にピロリ菌の検査を行えないのは何故?~静菌作用と偽陰性

回答:「偽陰性」という、正しくない検査結果が出るから

 「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」を服用していると、薬の影響で、本当はピロリ菌が居るのに、「ピロリ菌は居ません」という検査結果が出てしまう恐れがあります。
ピロリ菌の偽陰性
 このように、正しくない検査結果として「陰性」が出てしまう現象を、「偽陰性」と言います。

実際の休薬期間は?

 この「偽陰性」を防ぐために、保険適用上はPPIを中止してから最低でも2週間以上あけて検査をする必要があります。
 また、除菌治療の終了後は3ヶ月以上あけて検査するのが望ましいとする見解もあります。

 医師はこれらの見解を元に、個別に適切な休薬期間(2週~3ヶ月程度)を設けて治療を行います。

回答の根拠①:PPIの静菌作用による偽陰性

 PPIを服用中は、「尿素呼気試験」や「迅速ウレアーゼ試験」による判定結果が30~40%で「偽陰性」になる可能性が示唆されています1,2)。

 1) タケプロン錠 インタビューフォーム
 2) 日本消化器学会 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌治療に関するQ&A

※現在使われているPPI
『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』
『オメプラール(一般名:オメプラゾール)』
『パリエット(一般名:ラベプラゾール)』
『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』

 これはPPIが持つ、ピロリ菌の活動を抑える効果(静菌作用)によって、「本当は菌が存在するのに、あたかも菌が居ないかのような検査結果が出る」ために起こります。
ピロリ菌と静菌作用

 しかし、この静菌作用はあくまで「活動を抑えるだけ」であって、殺菌・除去する効果ではありません。

 そのため、ピロリ菌を除菌するには抗生物質などを使った三剤併用療法を行う必要があります(ピロリ菌を除菌した方が良い理由)。
 こうした理由から、ピロリ菌の検査を行う場合には、現在では最低でも2週間はPPIを中止してから検査を行うよう定められています3)。
PPIの静菌作用
 3) 日本消化器病学会 「消化性潰瘍診療ガイドライン (2016)」

回答の根拠②:なぜ休薬期間が2週から3ヶ月と、バラバラなのか

 PPI以外にも、除菌に使用する抗生物質なども「偽陰性」を示す可能性が指摘されています4)。

 4) 日本医事新報 No.4691,(2014)

 そのため除菌治療を行った後は、PPIを単独で使っていた場合よりもより長い間隔、3ヶ月以上あけて検査をすることが望ましいとする報告もあります5)。

 5) 日本消化器病学会 疾患Q&A「除菌判定のためには、PPIを4週以上休薬しなければならないのですか?」
ピロリ除菌後から検査までの期間

 保険適用上は2週間の間隔で検査が可能ですが、除菌後はより確実な結果を得るために2~3ヶ月あけて検査を実施する、という医療機関もあります。

薬剤師としてのアドバイス:除菌の薬、除菌後の薬、検査前の薬

 ピロリ除菌に臨む際、除菌の薬、除菌後の薬、検査前の薬、という3つの薬をまとめて処方されるケースもあります。
 それぞれ、PPIや抗生物質、H2ブロッカーなど、色々な薬が処方されることになりますが、どれをどういった順序で服用すれば良いのか、混乱してしまう人が少なくありません。

 保険を使ってピロリ除菌をできるのは、現在2回までです。飲み方を間違って除菌に失敗してしまうことは、経済的にも負担が大きくなるリスクがあります。

 正しい薬の飲み方を、医師・薬剤師にしっかりと確認してから除菌に挑むことをお勧めします。途中、何を飲めば良いかわからなくなった場合は、病院や薬局に問い合わせ、きちんと確認するようにしてください。

+αの情報①:『タケキャブ』でも2週間の休薬が必要と明記

 『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』は、「抗H.pylori活性」や「H.pyloriウレアーゼ阻害活性」がないことが示されています6)。
 しかし、ピロリ菌の活動を抑える静菌作用により「偽陰性」を示す可能性があり、従来のPPIと同様、『タケキャブ』でも判定前には少なくとも2週間の休薬期間を設けるよう、ガイドラインにも明記されました7)。

 6) タケキャブ錠 インタビューフォーム
 7) 日本ヘリコバクター学会 「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン(2016)」

+αの情報②:抗体検査は休薬期間が不要

 理論上、H.pylori抗体検査では、PPI服用中でも偽陰性を起こす恐れがありません。そのため、PPIを休薬せずに抗体検査を行うことは可能であるとする見解が発表されています8)。

 8) 中国四国厚生局 平成26年度診療報酬改定について「疑義解釈資料の送付について(その13)」

 このことから、2016年に改訂されたガイドライン上でも「抗体測定法は、PPIなどの影響を受けない」と明記されました7)。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

    • うさぎ
    • 2015年 12月 21日

    タケプロンを処方されています
    服用中に、明日から除菌して下さいと3剤を渡されました
    明日の朝で終わり、4週間後、呼気検査です
    休薬仲のタケプロン再開はすぐでもいいのでしょうか
    同じ病院の薬剤師から、検査2週刊前まで飲んで下さい
    すぐに休薬してください——–と二つの返事で困っていまっす

    • Fizz-DI
    • 2015年 12月 21日

    正確な状況がいまひとつ把握できませんが、
    ”呼気検査をする日から遡って2週間は、タケプロンを服用しない”のが基本です。もし服用してしまうと、除菌できたかどうかの判定が正しく行えません。

    それに合わせて服薬と休薬を調節するようにしてください。

    • ピロリン
    • 2016年 2月 11日

    ピロリ陽性で、クラリス&サワシリン&タケキャブの一次除菌薬だったんですが、飲み終わって3日目でも効果判定の呼気検査はしてもいいですか? 一早くして、まだ陽性なら早く2次除菌を開始したいのです。

    • Fizz-DI
    • 2016年 2月 11日

    >ピロリンさん
     除菌後、どのくらいの期間をおいて効果判定をするかは、医療機関や医師の判断によって様々です。PPIを使った場合は、「最低でも」2週間は必要、ということです。
     『タケキャブ』を使った除菌であれば、理論上は「偽陰性」になることがなく、効果判定はすぐにでも行える可能性もあります。しかし、「偽陰性」で菌が残っているのに治療を終了してしまった場合、胃炎などをぶり返すリスクが極めて高くなります。そのため、理論上は問題ない『タケキャブ』であっても、より慎重を期して少し間をおくこともあります。

     こういった判断基準は医療機関によって異なりますので、一度病院に確認するようにしてください。

    • しろうと
    • 2016年 2月 25日

    胃がんリスク検診・胃カメラ後のピロリ菌判定のためにPPI休薬を2週間と案内しています。すごくつまらない疑問なのですが、なぜ判定前の休薬は2週間なのに、除菌したあとの尿素呼気試験までの休薬は最低でも4週間(医師によっては2~3か月と案内)必要なのですか?もしご存知でしたらお教え下さい。

    • Fizz-DI
    • 2016年 2月 26日

     コメントありがとうございます。

     PPIを服用していた場合、保険適用上、2週間以上あけて検査をする必要があります。

     一方、抗生物質などでも「偽陰性」を示す可能性が指摘されており、除菌治療を行った後は、PPI単独で使っていたよりも長い期間、3ヶ月以上あけて検査するのが望ましいとする報告もあります。

     こうした見解をもとに、より確実な判定を行うために4週間、もしくは2~3ヶ月あけて検査する、という医療機関がほとんどです。

     これら設定期間の違いについては、日本消化器病学会のWebサイトでも言及されていますので、参考にしてください。https://www.jsge.or.jp/member/shikkan_qa/helicobacter_pylori_qa

    ※この点について、本文内にも加筆・修正を行いました。

    • しろうと
    • 2016年 3月 21日

    ご回答ありがとうございます。迅速丁寧に回答いただきましたのに、感謝の言葉が遅くなり申し訳ございませんでした。わかりやすい説明のお蔭で私のような素人にも理解できました。大変感謝しております。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


【主な活動】

★「PharmaTribune」にてコラム「今月、世間を賑わした健康情報」連載中です。
★6月22日のフジテレビ「直撃LIVE グッディ!」に薬剤師としてコメントを寄せました。
★3月23日発売の「異世界薬局(コミック版)」に薬学監修として携わりました。
★12月28日のYahoo!ニュース動画「抗生物質が効かなくなる日」に監修として携わりました。

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■お勧め書籍

recommended

■提携・協力先リンク


オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

  1. 活動実績

    【活動実績】Yahoo!ニュース動画「抗生物質が効かなくなる日」の監修に携わりま…
  2. 活動実績

    【活動実績】コミック版「異世界薬局」に監修として携わりました
  3. 活動実績

    【活動実績】日経新聞の土曜版「日経プラス1」に取材協力しました
  4. 活動実績

    【活動実績】情報番組「直撃LIVE グッディ!」に薬剤師としてコメントを寄せまし…
  5. 活動実績

    【活動実績】日経トレンディ3月号の「花粉症対策記事」に情報提供しました
PAGE TOP