『ザイロリック』と『フェブリク』、同じ尿酸生成抑制薬の違いは?~効果と値段、腎障害時の用量調節
記事の内容
- 1 回答:値段が安い『ザイロリック』、1日1回で効果の高い『フェブリク』
- 2 回答の根拠①:使用実績が豊富で、値段も安い「アロプリノール」
- 3 回答の根拠②:1日1回の服用で、高い効果を期待できる「フェブキソスタット」
- 4 薬剤師としてのアドバイス:尿酸値は急に下げたり、痛風発作中に変動させたりしない
- 5 薬のカタログスペックの比較
- 6 +αの情報①:「アザチオプリン」と併用禁忌なのは「フェブキソスタット」だけ?
- 7 +αの情報②:「フェブキソスタット」で指摘されていた心血管リスク
- 8 +αの情報③:尿酸値と痛風発作を起こすリスク
- 9 +αの情報④:尿酸生成抑制薬の新しい薬『ウリアデック(トピロキソスタット)』
回答:値段が安い『ザイロリック』、1日1回で効果の高い『フェブリク』
『ザイロリック(一般名:アロプリノール)』と『フェブリク(一般名:フェブキソスタット)』は、どちらも体内で作られる尿酸を減らす「尿酸生成抑制薬」です。
『ザイロリック』は、使用実績が豊富で値段も安い薬です。
『フェブリク』は、1日1回の服用で強力な効果を得られる薬です。

費用対効果の点では『ザイロリック』が優れるケースもありますが、少ない手間で高い効果を得られる『フェブリク』の方がよく処方されます。
また、『フェブリク』は軽~中等度の腎障害があっても基本的に用量調節が要らない、という点でも扱いは簡単です。
回答の根拠①:使用実績が豊富で、値段も安い「アロプリノール」
尿酸生成抑制薬の中でも「アロプリノール」は、日本でも1979年(※海外では1972年)から使われており、2011年に登場した「フェブキソスタット」に比べると使用実績は圧倒的に豊富です。

特に「アロプリノール」は古い薬であるぶん値段も安いため、費用対効果の観点では優れる1)という報告もあり、海外では「アロプリノール」が第一選択薬に選ばれている2)こともあるくらいです。
※先発医薬品の薬価比較(2025年改訂時)
アロプリノール・・・・・50mg(10.40)、100mg(11.80)
フェブキソスタット・・・10mg(14.20)、20mg(27.70)、40mg(48.80)
1) Ann Intern Med.161(9):617-26,(2014) PMID:25364883
2) Ann Rheum Dis.76(1):29-42,(2017) PMID:27457514
回答の根拠②:1日1回の服用で、高い効果を期待できる「フェブキソスタット」
1日2~3回の服用が必要な「アロプリノール」に比べて、1日1回の服用で良い「フェブキソスタット」の方が高い効果を得られることがわかっています3,4,5)。

また、「アロプリノール」で問題になる重症薬疹などの皮膚トラブルも起こしにくい6)ため、「フェブキソスタット」は少ない負担で、より大きな効果を、より安全に得やすい薬と言えます。
3) J Clin Rheumatol.17(4 Suppl 2):S13-8,(2011) PMID:21654265
4) Clin Ther.35(2):180-9,(2013) PMID:23332451
5) Sci Rep.6:33082,(2016) PMID:27605442
6) Ann Palliat Med.10(10):10327-10337,(2021) PMID:34498481
腎障害時の細かな用量調節も不要
腎機能が低下していると、『ユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)』などの「尿酸排泄促進薬」では効果が弱まってしまうため、「尿酸生成抑制薬」を使うのが基本になります7)。
しかし、「アロプリノール」では軽~中等度の腎障害(Ccrが30~60mL/min)でも血中濃度が上昇し、重篤な副作用を起こすリスクがあるため、細かく用量を調節する必要がありますが、こうした減量では効果も弱まってしまうことがよくあります8,9)。
その点「フェブキソスタット」は、軽~中程度の腎障害であれば通常用量のままで比較的安全に使うことができる10)ため、治療を失敗しにくい薬と言えます。ただし、血中濃度が高くなる傾向にはある10)ため、必要に応じて減量を検討する必要はあります。

※CCrまたはGFRの値と「アロプリノール」の減量目安 6,7)
60mL/min以上・・・通常用量(200~300mg/日)
30~60mL/min・・・100mg/日
10~30mL/min・・・ 50mg/日
7) 日本痛風・尿酸核酸学会 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019)」
8) 日本腎臓学会 「CKD診療ガイド2024」
9) 腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量(改訂37版)
10) フェブリク錠 インタビューフォーム
薬剤師としてのアドバイス:尿酸値は急に下げたり、痛風発作中に変動させたりしない
尿酸値を急に下げると、痛風発作を起こすことがあります。そのため、「フェブキソスタット」や「アロプリノール」も少ない量から飲み始めて、徐々に増量していく必要があります。また、痛風発作が起きている時に薬を飲んだり止めたりして尿酸値を変動させると、発作が悪化する恐れもあります。
こういった体験から、「痛風の薬を飲んだら痛風になった」という話がしばしば出回りますが、薬を適切に使っていれば避けられることがほとんどです。自己判断で薬の量や飲み方を変えないよう、十分に気を付けてください。
ポイントのまとめ
1. 『ザイロリック(アロプリノール)』は古い薬なぶん値段が安く、費用対効果に優れることもある
2. 『フェブリク(フェブキソスタット)』は、1日1回の服用で良く、尿酸値を下げる作用も強力で、皮膚トラブルも少ない
3. 『フェブリク(フェブキソスタット)』であれば、軽~中等度の腎障害があっても用量調節なしで比較的安全に使える
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
アロプリノール | フェブキソスタット | |
先発医薬品名 | ザイロリック | フェブリク |
薬効分類 | 尿酸生成抑制薬 | 尿酸生成抑制薬 |
適応症 | 痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症 | 痛風・高尿酸血症、がん化学療法に伴う高尿酸血症 |
用法 | 1日2~3回 | 1日1回 |
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤」への掲載 7) | CCrまたはGFRが60mL/minを下回るあたりから減量 | (掲載なし) |
併用禁忌 | (指定なし) | メルカプトプリン、アザチオプリン |
妊娠中の安全性 | オーストラリア基準【B2】 | オーストラリア基準【B1】 |
日本での承認年 | 1979年 | 2011年 |
世界での販売状況 | 欧州を中心に世界各国 | 日本、アメリカ、欧州 |
剤型の規格 | 錠(50mg、100mg) | 錠(10mg、20mg、40mg) |
先発医薬品の製造販売元 | グラクソ・スミスクライン | 帝人ファーマ |
同成分のOTC医薬品 | (販売なし) | (販売なし) |
+αの情報①:「アザチオプリン」と併用禁忌なのは「フェブキソスタット」だけ?
免疫抑制薬「アザチオプリン」と併用禁忌の指定があるのは「フェブキソスタット」だけ10)で、「アロプリノール」には禁忌指定はありません。そのため、「アロプリノール」であれば「アザチオプリン」と併用できる…と考えてしまう人は多いですが、この併用をする際には「アザチオプリン」を1/3~1/4に減量する必要があります11)。

実際、「アロプリノール」と「アザチオプリン」の併用でも骨髄抑制の報告があります12)。”禁忌の指定がない”という理由だけで、減量もせずに併用しないように、特に腎機能が低下している人13)では注意が必要です。
11) ザイロリック錠 インタビューフォーム
12) CMAJ.193(3):E94-E97,(2021) PMID:33462145
13) BPB Reports.4(5): 170-174,(2021) ※J-Stage
+αの情報②:「フェブキソスタット」で指摘されていた心血管リスク
「フェブキソスタット」で治療している人は、「アロプリノール」で治療している人よりも心血管系の死亡リスクが高い14)ことが報告され、2019年7月に添付文書にもその旨の注意喚起が新設されています15)。
海外では、心血管系のリスクを抱える人には避けるよう勧告している国もあります16)が、最近ではこうしたリスクの差は観察されなかった、という報告も増えています6,17,18)。
14) N Engl J Med.378(13):1200-10,(2018) PMID:29527974
15) 厚生労働省「2019年07月09日薬生安発0709第10号 別紙1」
16) 英国医薬品・医療製品規制庁「Febuxostat (Adenuric): increased risk of cardiovascular death and all-cause mortality in clinical trial in patients with a history of major cardiovascular disease」
17) Mayo Clin Proc Innov Qual Outcomes.4(4):434-442,(2020) PMID:32793871
18) Ren Fail.47(1):2470478,(2025) PMID:40012480
+αの情報③:尿酸値と痛風発作を起こすリスク
尿酸値が高いまま放置することの最大のリスクは、痛風発作を起こしてしまうことですが、そのリスクは尿酸値の数字によって大きく異なります。特に、尿酸値が9.0mg/dLを超えると痛風発作を起こす確率は飛躍的に高くなるため、速やかに治療することをお勧めします。
※尿酸値(mg/dL)と5年間の累積痛風発症率 19)
<6.0mg/dL・・・・・ 0.5%
6.0~6.9mg/dL・・・ 0.6%
7.0~7.9mg/dL・・・ 2.0%
8.0~8.9mg/dL・・・ 4.1%
9.0~9.9mg/dL・・・19.8%
>10mg/dL ・・・・・30.5%
19) Am J Med.82(3):421-6,(1987) PMID:3826098
+αの情報④:尿酸生成抑制薬の新しい薬『ウリアデック(トピロキソスタット)』
「尿酸生成抑制薬」としては、2013年に『ウリアデック(一般名:トピロキソスタット)』という薬も登場しています。「トピロキソスタット」も、「フェブキソスタット」と同じように軽~中等度の腎障害があっても用量調節が不要な薬ですが、1日2回の服用が必要20)であることと、効果は「フェブキソスタット」に比べるとやや弱め21)で、「アロプリノール」と同じくらい22)という面があります。
20) ウリアデック錠 添付文書
21) Circ J.81(11):1707-1712,(2017) PMID:28603225
22) J Clin Pharm Ther.41(3):290-7,(2016) PMID:27109450
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
【加筆履歴2019.7.25:フェブキソスタットの心血管系リスクについて】
CARES試験(PMID:29527974)の結果や、それに伴う添付文書の改訂、海外での勧告などの情報を加筆しました。