『ムコスタ』と『ジクアス』、同じドライアイ治療薬の違いは?~効果の違いと点眼回数・苦味・添加物による使い分け
記事の内容
回答:点眼回数が少なく保存料も不使用の『ムコスタ』、苦味や眼のかすみが少なく使用感の良い『ジクアス』
『ムコスタ(一般名:レバミピド)』と『ジクアス(一般名:ジクアホソル)』は、どちらもドライアイの治療に使う点眼薬です。
『ムコスタ』は1日4回の点眼で良く、保存料が使われていない使い切りタイプの薬です。
『ジクアス』は苦味や目のかすみが少なく使用感が良いほか、ソフトコンタクトレンズを装着したままでも使える薬です。

治療効果はどちらも大きくは変わらないため、点眼の回数や使い勝手、使用感、値段、コンタクトレンズの有無などで使い分けるのが一般的です。
回答の根拠①:点眼の手間が少ない「レバミピド」
「レバミピド」と「ジクアホソル」で、ドライアイの治療効果に大きな違いはありません1,2)。
しかし、ドライアイの治療薬は、『ヒアレイン(一般名:ヒアルロン酸)』や「ジクアホソル」のように1日5~6回の点眼が必要であるものが多いなか、「レバミピド」は1日4回の点眼で良く3)、手間が少ないという特徴があります。

4~5時間ごとに点眼する「1日5~6回の点眼」は大変ですが、「1日4回の点眼」であれば朝・昼・夕と寝る前という”わかりやすいタイミング”での点眼が可能です。そのため、「レバミピド」は点眼をうっかり忘れやすい忙しい現代人にも適した薬になっています。
1) Sci Rep.14(1):13306,(2024) PMID:38858411
2) Sci Rep.7(1):15210,(2017) PMID:29123104
3) ムコスタ点眼液 添付文書
「レバミピド」の点眼液は、1回使い切りタイプ
「レバミピド」の点眼液は、1本に入っている薬液が0.35mLと少量の「1回使い切りタイプ」のため、保存料などが使われていません3)。
特に眼に何らかの疾患がある人の場合、保存料を含む点眼薬を長期使用していると、眼の乾燥やアレルギーといった症状を起こすことがある4)ため、こうした保存料不使用の点眼薬は貴重な選択肢になります。

ただし、そのぶん「レバミピド」の点眼液は1日あたりのコストも高めになるため、お財布事情との相談も必要です。
※1日あたりの薬価の概算(※2025年改訂時、先発医薬品の場合)
製剤 | 1日あたりの薬価 | 計算 |
レバミピド (1日4回) | 63.9 | 15.9×4 (1日に4瓶使う) |
ジクアホソル[通常] (1日6回) | 41.22 | 343.5÷100×12 (1瓶100滴、1日12滴使う) |
ジクアホソル[LX] (1日3回) | 46.23 | 770.5÷100×6 (1瓶100滴、1日6滴使う) |
4) Curr Opin Allergy Clin Immunol.11(5):464-70,(2011) PMID:21822131
回答の根拠②:使用感・満足度の良い「ジクアホソル」
「ジクアホソル」と「レバミピド」で治療効果は変わらないものの、使用感は「ジクアホソル」の方が優れており、患者満足度も高い傾向にあります1,2)。これには、「レバミピド」には成分そのものに強い苦味があるため、点眼後には苦味を感じやすい、ということが関係しています1)。
また、「レバミピド」は点眼液が白く濁っている(懸濁性)ため、点眼後に一時的に眼がかすむこともあります3)が、「ジクアホソル」ではこうした副作用も基本的には起こらないため、治療を続けやすい薬と言えます。

ソフトコンタクトレンズ装着時にも適した「ジクアホソル」の先発医薬品
「ジクアホソル」の先発医薬品『ジクアス』には「塩化ベンザルコニウム」が使われていない5)ため、ソフトコンタクトレンズを装着したままでも点眼できるという利点があります(※ジェネリック医薬品には「塩化ベンザルコニウム」が使われているものもあります)。
「レバミピド」の点眼液にも「塩化ベンザルコニウム」は使われていませんが、有効成分の「レバミピド」がレンズに吸着する性質があります3)。そのため、点眼後に違和感がある場合は装着したままの点眼は控えることをお勧めします。
5) ジクアス点眼液 添付文書
薬剤師としてのアドバイス:「レバミピド」を使ってすぐに苦味を感じる場合は
「レバミピド」を点眼した直後に苦味を感じる場合、それは薬そのものの問題というより、適切な点眼をできていない可能性を疑う必要があります。

点眼液を使ったあとは、薬液がすぐに鼻涙管を通って喉のほうへ流れて出ていってしまわないよう、目頭(鼻涙管のある場所)を軽く押さえて目を閉じ、薬液が目全体に行きわたるように1~5分ほど静かに待つ必要があります3,5)。「レバミピド」を使ってすぐに苦味を感じるということは、こうした点眼方法ができていないために、点眼した薬液がすぐに喉に流れ落ちていってしまっていることを意味します。
特に、点眼薬を使った後に、パチパチとまばたきする人は多いですが、まばたきを繰り返すと、薬液が鼻涙管から流れ出ていくのをますます速めることになりますので、控えるようにしてください。
「レバミピド」や「ジクアホソル」は効果の高い薬ですが、適切な方法で使えていないと、期待通りの効果は得られません。”自己流”の使い方になっていないか、ときどき医師や薬剤師にチェックをしてもらうことをお勧めします。
ポイントのまとめ
1. 『ムコスタ(レバミピド)』と『ジクアス(ジクアホソル)』で、ドライアイの治療効果はほぼ同じ
2. 『ムコスタ(レバミピド)』は、1日4回の点眼で良く、保存料も使われていない
3. 『ジクアス(ジクアホソル)』は、苦味や目のかすみといった副作用が少なく使用感が良い
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
レバミピド | ジクアホソル | |
先発医薬品名 | ムコスタ | ジクアス |
適応症 | ドライアイ | ドライアイ |
点眼液の性質 | 懸濁性 | 水性 |
用法 | 1日4回 | 1日6回 (※LXは1日3回) |
主な副作用 | 苦味(15.7%)、刺激感(2.5%)、霞視(1.2%) | 刺激感(6.7%) |
薬液のpHと浸透圧比 (※先発医薬品) | pH 5.5~6.5 浸透圧比 0.9~1.1 | pH 7.2~7.8 浸透圧比 1.0~1.1 |
塩化ベンザルコニウム (※先発医薬品) | 不使用 | 不使用 |
ソフトコンタクトレンズへの吸着 | 有効成分が吸着する恐れ | – |
世界での販売状況 | 日本のみ | 東アジアを中心に9ヵ国 |
規格の種類 | 点眼液UD(※1回使い切りタイプ) | 点眼液3%、LX点眼液3% |
1規格あたりの薬液量 | 1本0.35mL | 1本5mL |
同成分の別医薬品 | 胃粘膜保護薬「レバミピド」 | – |
先発医薬品の製造販売元 | 大塚製薬 | 参天製薬 |
同成分のOTC医薬品 | (販売されていない) | (販売されていない) |
+αの情報①:点眼回数が少ない「ジクアホソル」のLX点眼液
「ジクアホソル」の点眼液は、通常は1日6回の点眼が必要ですが、これを添加物(粘稠化剤)の改良によって1日3回の点眼で済むように改良したのがLX点眼液です6)。
点眼回数が少なくなることで服薬アドヒアランスが改善し、より確実に治療できるようになることが期待できます7)が、1日6回の従来製剤の方が良いという人も1割弱ほど居るようです8)。

6) ジクアスLX点眼液 インタビューフォーム
7) Adv Ther.41(6):2477-2485,(2024) PMID:38709396
8) PLoS One.19(9):e0305020,(2024) PMID:39325761
+αの情報②:複数の点眼薬を使う場合は、薬の性質に合わせた順序・時間間隔が必要
複数の点眼薬を使うとき、連続で点眼すると「先に点眼した薬」を「後から点眼した薬」で洗い流してしまうことになります。実際、30秒間隔では75%、2分間隔では40%程度の薬液が洗い流されてしまう9)ため、通常は5分以上の間隔をあけて点眼を行う必要があります。
ただし、吸収の遅い「懸濁性点眼液」の場合は10分以上の間隔が必要になることもあります(※「レバミピド」は懸濁性点眼液ですが、5分以上の間隔で使用可3))。
また、点眼後にゲル化して眼の表面に留まるように設計された「ゲル化製剤」は、点眼薬としては”最後”に使う必要があります。

※ゲル化製剤(点眼液)の例
オフロキサシンゲル化点眼液、リズモンTG点眼液、チモプトールXE点眼液、ミケランLA点眼液、ミケルナ配合点眼液
使っている点眼液をどのくらいの時間間隔、どういう順序で使えば良いかわからなくなった場合は、医師・薬剤師に相談するようにしてください。
9) J Pharm Sci.65(12):1816-22,(1976) PMID:1032669
+αの情報③:点眼薬は「ボトルの底」を押す
多くの点眼薬は、「ボトルの底」を押すと1滴(40~50μL)が出るように設計されています。力加減が難しくて薬液がたくさん出てしまう…という人は、「ボトルの側面」を強く押しているケースが多々あります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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